イチロー氏も認めた女子野球の“進化”「マジか?」 6年目で初の試みも…終わらない「役割」

「1番・投手」で先発したKOBE CHIBENのイチロー氏【写真:井上学】
「1番・投手」で先発したKOBE CHIBENのイチロー氏【写真:井上学】

“イチロー投手”から4打数3安打、二盗も許し「参りました」

 イチロー氏(マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)の、女子野球振興のための取り組みが大きな成果を上げている。「SATO presents 高校野球女子選抜 vs イチロー選抜 KOBE CHIBEN」が13日に東京ドームで開催され、スタンドには2万5088人の観客が足を運んだ。イチロー氏が現役引退後に結成したアマチュア野球チームが、選りすぐりの高校野球女子選手と対戦する強化試合は今年で6年目を迎えた。

 イチロー選抜は、高校野球女子選抜に6年連続で勝利し、イチロー氏はいずれも投手として先発完投。今年も7-0のスコアで圧勝した。とはいえ、高校野球女子の実力は年々、着実にアップしているようだ。

 今年特に目立ったのが、1番打者としてフル出場し、イチロー氏から4打数3安打。敵失を誘った第3打席を含めて全打席で出塁した神戸弘陵学園高の福田稟(りん)内野手だ。

 右投左打の俊足自慢はまず初回先頭で、痛烈なピッチャー返しで中前に達するヒットを放ち出塁。次打者の初球に二盗も成功させた。3回の第2打席では右前打。6回の第3打席の遊ゴロも痛烈で敵失を誘い、8回の第4打席では詰まりながらも、遊撃手の後方に運び3本目の安打を記録した。守っては遊撃で先発し、三塁、二塁の守備もこなした。

 打たれたイチロー氏は「参りました。本当にいい選手。スターが生まれたなという感じがしますよね。打席に立った時に空気が変わる選手って、いるんですよね。まさにそうでした。(走者として)二塁に行った時に『ナイスバッティング』と声をかけましたが、そんなことを言っている場合じゃねえなと思いました」と絶賛。「(相手投手にとっては)嫌な感じ。ずっと嫌な感じ。本当に嫌な感じでした」と繰り返した。

 福田さんは「イチローさんから褒めてもらえたことは、世界で一番うれしいです」と感涙。「2年前、神戸弘陵のキャプテンだった方がこの試合に出場するのを見てから、ずっとここでやりたいと思っていました」と明かした。

試合後、取材に応じたイチロー氏、神戸弘陵・福田稟と山戸優菜、松井秀喜氏、松井稼頭央氏(左から)【写真:井上学】
試合後、取材に応じたイチロー氏、神戸弘陵・福田稟と山戸優菜、松井秀喜氏、松井稼頭央氏(左から)【写真:井上学】

女子野球公式戦最速記録は133キロ「僕の役割も終わりかな」

 一方、先発でマウンドに上がった同じ神戸弘陵学園高の右腕・山戸優菜投手も、初回先頭のイチロー氏を遊ゴロに仕留めたのを始め、1イニングを3者凡退に抑えた。イチロー氏に対し「ショートゴロをイメージしていたので、『やってやったぜ』と思いました」と満面に笑みを浮かべた。

 最終的に5打数2安打だったイチロー氏は、「今回の女子選抜のピッチャーは変化球が、フォークはちゃんとフォーク、ツーシームはツーシームになっていました。山戸さんはスライダーが持ち味で、凄くいい球でした」と評価した。

 福田さんと山戸さんが所属する神戸弘陵学園高は今夏、全国高校女子硬式野球選手権大会で優勝。同大会は2021年から、決勝戦のみ甲子園球場で行われており、こちらも野球女子共通の目標の1つになっている。

 実はイチロー氏は今夏の決勝戦を、米シアトルの自宅でインターネット中継を通じ観戦したという。「そうやって先に情報を入れたのは初めてです」と明かす。「山戸さんの球を見て『マジか?』と思いましたし、実際に立ったら、映像で見るよりもだいぶいい球でした」と称賛。イチロー氏が危機感を抱いて事前に“偵察”したくなるほど、女子野球のレベルが上がっているということだろうか。

 また、女子野球界では昨年、読売ジャイアンツ女子チームの清水美佑投手と桑沢明里投手が相次いで、女子野球公式戦最速記録の133キロをマークした。

 それだけに、この日の最速が136キロだったイチロー氏は「そろそろ僕の役割も終わりかなという不安もありました」と吐露した。試合後にグラウンド上で行われたインタビューでは、イチロー氏が「女子ではまだ無い球でした? まだまだ僕、イケそうですか?」と問いかけ、福田さんから「全然イケます」と太鼓判を押される一幕もあった。

 どこまでも真剣で、それでいて和やかで明るいムードに包まれ、高校野球女子の憧れとなっている舞台だけに、今後も長く続いてほしい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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