阪神・神宮僚介が1軍で動じないワケ 弱みをプラスに変える“会話”「すごく楽しい」…防御率1.26の裏にある思考

1軍昇格以降、阪神ブルペンを支える活躍を見せる神宮僚介【写真:黒澤崇】1軍昇格以降、阪神ブルペンを支える活躍を見せる神宮僚介【写真:黒澤崇】

育成選手として入団し7月に支配下登録、神宮僚介が1軍で見せる成長

 育成ドラフト1位で入団し、7月に支配下を掴んだ阪神の神宮僚介投手。ここまで14試合に登板し防御率1.26と、優勝争いを続けるブルペンで確かな存在感を放っている。サイドスローから繰り出す制球が持ち味の右腕の投球スタイルには“1本の芯”がある。

 神宮は、シンカーやスクリューなど、左打者の外角に沈む系の球種を、自在に操る技能レベルには達していない。そんな中、右サイドスローの泣きどころでとも言える左打者をどう封じるか。その問いに、ルーキーは迷いなくこう答えた。

「僕は落ちる系のボールが投げられないので、左打者に対して、外角へのコントロールには特に気を付けています。間違っても内側に投げミスをしないように。コントロールミスをするなら、外に外れるようにということを意識しています」

 その徹底ぶりは、極限の場面でも揺るがない。「もし満塁で3ボールだったとしても、外角に外れてボール判定となり、押し出しになってもいい。内に甘く入ってホームランや長打を浴びてしまうよりは、そっちの方がいいと思っています」。

 押し出し四球による1点はやむを得ないと切り捨てられるマインド。その裏には、甘く入った1球で試合を壊すことだけは避けたいという真理――。もちろん、どの場面でも、打者を抑えにいくことが前提ではある。だが、リスクの取り方を明確に割り切っている。新人とは思えない投球哲学だ。

大学2年からサイドスローに転向も、3年に右肘のTJ手術

 その言葉は気負いから出たものではない。プロのマウンドは今、楽しくて仕方がないという。「今はすごく投げるのが楽しみなんです。元々、ものすごく緊張するタイプなんですが、今は本当に楽しいと思って投げられています。抑えればスタンドが沸いてくれるし」。制球に自信は芽生えてきたかと重ねると、返ってきたのは謙虚な言葉だった。

「めちゃくちゃ自信があるわけじゃありません。まだまだ、これからです」

 現在地にたどり着くまでの道のりは、決して平坦ではなかった。東京農業大学北海道オホーツクでは2年からサイドスローに転向。3年春に最優秀選手賞に輝いたものの、その年の6月に右肘を痛め、7月にトミー・ジョン手術(TJ)に踏み切った。

 長いリハビリを経て4年秋にようやく実戦復帰。北海道地区の決勝では7回11奪三振1失点の好投でチームを明治神宮野球大会へと導き、育成1位で虎の門をたたいた。同じ大学からのプロ入りは、2022年に楽天4位で入団した伊藤茉央以来の快挙だった。

東京農業大学北海道オホーツク4年時には明治神宮野球大会で登板【写真:加治屋友輝】東京農業大学北海道オホーツク4年時には明治神宮野球大会で登板【写真:加治屋友輝】

 そしてサイドスロー転向の際、神宮が手本にしたのは、その伊藤だった。「大学の3つ先輩に当たる伊藤茉央さん(現中日)ですね。ビデオ映像を送ってもらったりして、参考にさせてもらいました。そこから自分で試してみて、ここは違うなと思ったところを修正しながら、自分の投げ方にしていきました」。先輩の背中をなぞりながら、そこに自分だけの工夫を重ねて、今の形をつくり上げた。

捕手が出すサインの意図を理解し抑えることが「すごく楽しい」

 今季は2軍でアピールを続け、7月3日に支配下登録。16日に1軍昇格すると、8月5日のDeNA戦で1軍初登板を果たし、左打者の筒香嘉智から空振り三振を奪うなど3者凡退と上々の滑り出しを見せた。

 8月19日のヤクルト戦では2死満塁の場面で登板すると、内山壮真を見逃し三振に仕留めてピンチを断ち切った。23日の横浜戦ではプロ初ホールドを記録。25日の中日戦ではミゲル・サノーに本塁打を浴びる痛い経験もしたが、その後は動じることなくマウンドに立ち続けた。

 9月6日のDeNA戦では、3点ビハインドの3回無死一、二塁という難しい場面からリリーフ登板。ピンチを切り抜け、3イニングを無失点に抑えた。得点圏に走者がいる場面で送り出されるのは、首脳陣の信頼と期待の高さの証拠だろう。

ピンチでの落ち着きのある投球で首脳陣の信頼を勝ち取ってきた【写真:栗木一考】ピンチでの落ち着きのある投球で首脳陣の信頼を勝ち取ってきた【写真:栗木一考】

 投手としての自我ではなく、バッテリーで築く1球、1球の配球への理解を示す。「今は捕手からのサインが出て、そのリードの意図を自分が理解して、その通りに投げられた結果、抑えられるとすごく楽しい」と話す。

 決められた1球を、決められた場所へ。地味に見えるが、最も難しく、勝負どころで最も信頼される投球スタイルだ。

「緊張しい」を自認するルーキーは、制球力というこだわりを武器に、球団初のリーグ連覇を目指す藤川阪神を支える一人になりつつある。

(楊枝秀基 / HideKi Youji)

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