中日からド軍に届いた「情熱的なオファー」 GMが明かしたウォード獲得の水面下交渉…マイナー168発男移籍の真実

中日へ移籍するライアン・ウォード。NPBでの大暴れが期待される【写真:黒澤崇】中日へ移籍するライアン・ウォード。NPBでの大暴れが期待される【写真:黒澤崇】

ドジャースはマイナー通算168発ウォードの中日移籍を発表

 ドジャースは22日(日本時間23日)、中日へライアン・ウォード外野手の保有権を譲渡したことを発表した。マイナー通算168本塁打を誇る大砲のNPB行きについて、ドジャースのブランドン・ゴームズGMが取材に応じた。球団トップの口から語られた言葉から見えてきたのは、選手層の厚い常勝球団ゆえの苦渋の決断と、メジャーリーグの移籍マネジメントの舞台裏だった。

「ライアンは素晴らしいシーズンを送り、私たちが勝利するのを手助けしてくれた。彼が向こう(日本)でチャンスを得られたことを心から嬉しく思っている」

 ゴームズGMは、ウォードの中日移籍について晴れやかな表情で語り始めた。

 1998年生まれ、米マサチューセッツ州出身のウォードは、2019年ドラフト8巡目でドジャース入りした。マイナーリーグでは2021年から2025年まで5年連続で20本塁打以上を記録し、通算784試合で打率.263、168本塁打、588打点をマークした左の大砲だ。

 2025年には傘下3Aオクラホマシティで本塁打と打点の2冠に輝くなど圧巻の成績を残し、今季ついに念願のメジャーデビューを果たした。メジャーでは20試合に出場して打率.218ながら、3本塁打、12打点を記録。6月10日(同11日)の敵地・パイレーツ戦では3号満塁弾を放つなど勝負強さを発揮した。

 しかし、大谷翔平やムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンらスーパースターを擁する常勝軍団ドジャースで、28歳の苦労人がレギュラーの座を掴み取るのは極めて困難だった。

 ゴームズGMは「彼にはここで十分な出場機会を与えてあげることができなかった。だからこそ、彼にとって良い選択であり、我々にとっても良い結果となる形を模索した」と明かす。球団としては貴重な戦力でありながらも、9月16日にメジャー出場前提の40人枠から外す措置(DFA)をとり、他球団との交渉の道を開いた。

ド軍のゴームズGMが移籍の背景を語った【写真:小谷真弥】ド軍のゴームズGMが移籍の背景を語った【写真:小谷真弥】

 では、この移籍劇はどのようにして動いたのか。物語が本格的に展開したのは、DFA後の水面下の交渉だ。

水面下で進んだ中日からの打診、本人不在で進む現代ビジネスの裏側

「きっかけは、中日側からの関心を示したことでした」とゴームズGMは明かす。「通常、こうした交渉はNPBの球団側から連絡があり、興味を示されることから始まる」と語る通り、より長打力を求める中日の編成陣が、速やかにドジャースへアプローチを開始した。

「ここ数週間にわたって話し合いを重ね、このタイミングが双方にとってベストかどうかを見極めていった」

 中日からの「情熱的なオファー」と、出場機会を求めるウォードの立場、そして金銭トレードによる譲渡というドジャース側の利害が一致し、取引は急速に具体化していった。

 この移籍劇において最も興味深いのは、当事者である球団トップと選手本人の「距離感」だ。交渉成立後、ウォード本人とどのような会話を交わしたのかと問われたゴームズGMは、意外な事実を口にした。

「実は、彼とはまだ直接話せていないんだ」

 記者が驚いて聞き直すと、ゴームズGMは苦笑いを浮かべながらこう続けた。「今回の交渉は、すべて彼の代理人を通じて行われたからね」。

 かつてのように球団首脳と選手が膝を突き合わせて将来を話し合う時代は終わり、現代における選手移籍は、代理人を介した高度なビジネスとして完結する。球団トップと選手が直接言葉を交わす前に合意・発表に至るというエピソードは、ビジネス化が進む現代プロ野球のリアルな舞台裏を物語っている。

 また、現在はMLBと選手会による労使協定の改定交渉が混迷を極めており、今オフに「ロックアウト(オーナー側による球団施設締め出し)」へ突入することが確実視されている。ロックダウンが発動されれば、球団の補強活動が凍結されるだけでなく、選手は長期間の実戦離れを余儀なくされる。ウォード側としては、確実にプレー機会を確保したい思いもあったのだろう。

中日での活躍に太鼓判「本物のパワーを持っている」

持ち味の長打力が日本でも発揮されるか注目だ【写真:黒澤崇】持ち味の長打力が日本でも発揮されるか注目だ【写真:黒澤崇】

 直接の言葉は交わしていないものの、ゴームズGMがウォードの能力に寄せる信頼は本物だ。日本野球への順応性について問われると、即座に強い確信を示した。

「彼は非常にうまくやると思う。本物のパワーを持っていて、守備も良い。素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるはずだ」

 さらに、中日での具体的な活躍イメージについても言及した。「ドジャースで見せたのと同じように、大きなパワーを発揮し、高い打率を残して走者を返すことができる。必要に応じて外野だけでなく一塁も守れる」と、その多才さをアピールする。

 ドジャースという層の厚い組織から解き放たれ、中日という新天地を得たマイナー168発の大砲。代理人を介したビジネスの裏側を経て誕生したこの移籍劇が、中日の打線を大きく塗り替えることになるのか。太平洋を渡る大砲の挑戦に、古巣のトップも大きな期待を寄せている。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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