覚醒予感も鷹から戦力外…それよりも西武・仲田慶介が滲ませる覚悟 “弱肉強食”で鍛えられた「128番目の男」の真骨頂

23日のソフトバンク戦で二塁打を放った西武・仲田慶介【写真:産経新聞社】23日のソフトバンク戦で二塁打を放った西武・仲田慶介【写真:産経新聞社】

 軽やかに一塁を蹴り、颯爽と二塁ベースへ滑り込んだ。西武・仲田慶介内野手が23日のソフトバンク戦(みずほPayPayドーム)に途中出場し、9回に右翼線二塁打を放った。加入2年目で古巣から初安打。愚直なまでに野球と向き合う27歳は素直な思いを語り、プレーを支えるひたむきな姿勢は首脳陣からも高く評価されている。

「PayPay(ドーム)での試合だけスタメンがなくて、今まで1回も(笑)。そんなに意識はしていないですけど、福岡で……とかじゃなくて、自分の打席のチャンスが回ってきたので、その中でしっかり結果を残せたのは良かったです」

 3ボールから大山凌投手が投じた4球目、甘く入った145キロの直球を強振した。2死でスコアは3-10という敗戦目前の厳しい状況だったが、いつだって必死に食らいつくのが仲田の持ち味だ。

 2021年育成ドラフト14位でソフトバンクに入団した。同年ドラフトで指名された全128人のうち、128番目。最後に名前を呼ばれたのが福岡大の仲田だった。3年目の2024年3月に支配下登録され、1軍では24試合出場で打率.214だったが、ファームで打率.403、出塁率.466をマークして開花を予感させた。ところが同年オフに戦力外通告を受けると、育成での再契約の打診を断り、西武での“勝負”を決断した。

 西武でも育成からのスタートだったが、内野も外野もこなすユーティリティとして加入1年目の開幕前に支配下登録を勝ち取った。以降、ソフトバンク戦には2年間で11試合に出場したが、6打数無安打と快音はなし。23日の二塁打が、古巣からの初安打だった。

 レギュラーシーズン最後の直接対決で生まれた思い出深い一打。仲田は静かに振り返った。

ひたむきな姿勢が高く評価されている仲田【写真:加治屋友輝】ひたむきな姿勢が高く評価されている仲田【写真:加治屋友輝】

CSファーストステージに勝てば、ファイナルで古巣ソフトバンクと対戦

「古巣だからとか、福岡だから……というのは特別ないんですよね」。口調は淡々としている。この先、西武が日本ハムとのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージに勝てば、優勝したソフトバンクとファイナルステージで対戦する。悔しい思いを味わった相手と、頂点を決める舞台で戦える。それでもやはり、仲田は冷静だった。「もし自分がメンバーに入るのであれば、しっかり自分の役割を果たすだけだと思っています。自分のやるべきことをしっかりやるだけです」と力強い視線を向けてきた。

 常に全力前進。練習から目を引くようなガムシャラな姿勢は首脳陣の目にも頼もしく映っている。

「周りがやっていようといまいと、それは関係なく熱心に練習をするという姿は、やっぱり周りの選手も、とにかく見習うべきだなとは感じている人はいると思います」

 仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチが絶賛する。仲田の野球との向き合い方はシンプルではあるが、簡単ではないという。

「実際に行動に移すとなると、なかなか足は動かないんですよね」と語り、こう続けた。「ソフトバンクはそういう選手がほとんどだったので。みんなそうあるべきだと感じているんじゃないかな。やっぱり常勝チームでやっていれば、それは当然だし、それでも相手にされないことだってあるしね」。

 今季リーグ3連覇を果たすなど、圧倒的な戦力を誇るソフトバンク。選手の入団、退団が激しい弱肉強食のチームでは、グラウンド上で息を抜く暇などない。仲田に根付いた“強者のイズム”が西武ナインにも刺激を与えているという。

仲田は“いてくれないと困る存在”になっている【写真:加治屋友輝】仲田は“いてくれないと困る存在”になっている【写真:加治屋友輝】

始球式でまさかのダイビングキャッチ「体が反応しちゃいました」

「あいつはあいつなりに自分のできることをやっている。今年は結構ね、いい活躍をしていますよね、うん」。仁志コーチは、今季の出場わずか25試合の男が“いてくれないと困る存在”だと語る。

 自身のスタイルについて仲田は「常に試合をイメージして練習からやるというのは意識していますし、僕は出番も限られているので、1打席、1球で結果を残さないといけない。練習からその意識でしっかりやるというのは強くなったと思います」とうなずいた。

 ある夏の試合前、ファーストピッチセレモニーに挑んだ女性の声優の捕手役を務めた。ノーバウンド投球ならその声優が自身のイベントを告知できるという企画のなか、投じられたボールはホームよりかなり手前に落ちそうな山なりの軌道だった。

 しゃがんで構えていた仲田は、咄嗟に前方へ飛び出し、地面スレスレで頭から飛び込んでキャッチ。無事にノーバウンド投球を“成功”させた。「体が反応しちゃいました。無意識に飛びました(笑)」。

 ユニホームを着ていれば、いつだって全力。戦力外を味わった男が、プレーオフで流れを変えるようなラッキーボーイになるかもしれない。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

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