DeNA中川颯が独占激白、明かした電撃引退の“真実” 「長く感じた」6年間の思い…ひっそり終えたラスト登板

現役引退を表明したDeNA・中川颯【写真:町田利衣】現役引退を表明したDeNA・中川颯【写真:町田利衣】

6年間の現役生活に幕「しんどい時間のほうが長かった」

 DeNAは30日、今季限りで戦力外となった中川颯投手が現役を引退すると発表した。9月上旬に決断しながらも「僕にフォーカスとかはしなくていいんです」と、25日にジャイアンツタウンで行われたファーム・リーグの巨人戦でひっそりとラスト登板を終えていたサブマリン。「しんどい時間のほうが長かったので、長く感じました」という6年間の現役生活に終止符を打った真相、今の思いとは――。

 9月中旬のことだっただろうか。久々に見た中川颯は、夏前から生やしていたあごひげを剃り、長かった髪の毛もサッパリしていた。

 実は、あごひげを生やし始めた夏前に理由を聞くと「気分転換ですよ。でもあまり評判よくないんですよね」と笑っていた。そして「でも、しばらくはこれでいきますから」と“宣言”していた。

 だからあの日、あごひげを剃ったことに対して、また気分転換なのかと思った。しかし話題が及んだ瞬間、いつもニコニコしている中川颯の表情がギュッと引き締まったのが印象的だった。

「これは……明確な意図があります」

 それは現役引退の決断とも重なっていた。「今年で最後って決めて、それで……。うん、そういうことです」。プロ6年目27歳の2軍での今季成績は、25登板で防御率0.70。どこかでまだできるのでは、と思ってしまいそうにもなったが、「スッキリしています。やり切った思いです」と言い切る姿に、そっと言葉をのみ込んだ。

アンダースローでプロ6年間を戦い抜いた【写真:加治屋友輝】アンダースローでプロ6年間を戦い抜いた【写真:加治屋友輝】

 DeNAで3年目となった今季、開幕1軍を果たすも5月2日に出場選手登録を外れた。7月18日に再昇格するもなかなか登板機会がなく、同31日に久々の1軍登板を果たしたが、8月2日にまたしても抹消となった。このとき、中川颯は初めての感情に気付いた。

「いつもだったら悔しいんですけど、そのときはあまり感じなくて。そのままファームで試合にも投げていたんですけど、心が体に追いついていないというか、力が入らなくなっちゃたんです。最後の最後、リリースで気持ちが乗らない。マウンドに立ったら勝手にできていた“一押し”が押せなくなっちゃっていて。それが1試合だけではなく長いこと続いて、無理矢理戻そうとしたけど体が言うことを聞かないし、肩もそれなりに我慢してやっていたので」

 来季構想からは外れており、9月に入った頃にユニホームを脱ぐことを決断。中旬頃に球団側に意思を伝えた。迷いはなかった。本来であればファーム・リーグのホーム最終戦だった23日中日戦が最後のマウンドとなる予定だったが、まさかの雨天中止。「登場曲かけたかったなぁ。雨男でした」と苦笑いした。

 立大から2020年ドラフト4位でオリックスに入団。ルーキーイヤーに1試合に登板したが、2年目のオフに戦力外通告を受けて育成契約へ。2023年は春季キャンプに参加することもできず、支配下に戻ることなく再び戦力外となった。そのとき手を差し伸べてくれたのが、地元球団のDeNAだった。

 神奈川県横浜市出身。ベイスターズが前回優勝した1998年10月8日が生まれてくる予定日だったが、2日遅れて10月10日に誕生した。幼少期から横浜スタジアムに通い応援グッズを手に声を枯らし、石井琢朗モデルのグラブを使って白球を追った。三浦大輔前監督には小学生時代にトレーニング施設で遭遇し握手をしてもらい、中学時代の野球教室には村田修一現2軍監督が教えに来てくれたこともある。

現役生活に別れを告げる【写真:町田利衣】現役生活に別れを告げる【写真:町田利衣】

「ラストのつもりで」追い込み…「もっとやればよかったとか全くない」

 そんな縁だらけのチームで再起した。2024年は29試合に登板して日本一を味わった。2025年は27登板で防御率1.93をマーク。打撃でも2024年に横浜スタジアムでプロ初本塁打を放つなど類まれなるセンスで沸かせた。

「2024年も打たれてもいっぱい使ってもらったし、昨年も結構我慢して使ってもらったと思います。使われない人の気持ちの方が分かるので、だから一回でもいい思いができたので、それはよかったなと思います。今年もヒットを打てたし、(4月25日の)巨人戦でビハインドだけどロングで投げて無失点で抑えられたり、やりがいのある試合もあったので僕個人の中では満足です」

 今年を迎えるにあたり、右腕には「ラストのつもりでやろう」という並々ならぬ決意があった。自主トレも後悔しないよう、過去一番といえるほど追い込んだ。キャンプでも、シーズンに入ってからも、やるべきことを積み重ねてきた自負がある。だから「やることをやってこの結果だったら仕方ないかなって。もっとやればよかったとか全くないです」と気持ちは晴れ晴れとしていた。

 今後はプライベートで手掛けるレザークラフトブランド「HAYATE CRAFT(ハヤテクラフト)」の道などを視野に入れている。

「22年間野球漬けで頑張ってきたから、ちょっとゆっくりしたいですね」

 最後まで爽やかに、中川颯がユニホームを脱いだ。

(町田利衣 / Rie Machida)

RECOMMEND

CATEGORY