日本ハム時代になかった感覚 オリックスで“改造”→増えた引き出し…吉田輝星に響く若月健矢の言葉

オリックス・吉田輝星は4月にTJ手術からの復帰を果たした【写真:栗木一考】オリックス・吉田輝星は4月にTJ手術からの復帰を果たした【写真:栗木一考】

2024年に右肘のTJ手術→今季復帰し、26試合に登板した吉田輝星

 オリックスは3日の楽天戦(楽天モバイル最強パーク)をもって、2026年シーズンの全日程を終えた。チームはつかの間の休息をとり“鍛錬の秋”を迎えるが、右肘のトミー・ジョン(TJ)手術を経て今季復帰した吉田輝星投手は、すでに来シーズンを見据えている。

 吉田は2025年3月にTJ手術を受け、リハビリを経て今年の4月25日の日本ハム戦(京セラドーム)で、2024年9月28日以来の復帰登板を飾った。2死満塁のピンチでマウンドに上がり、一邪飛に仕留めたその姿は、多くのファンの胸を打った。今季はリリーフとして計26試合に登板し、2勝2敗、8ホールド、防御率4.22。8月に1軍登録を抹消され、以降はファームで調整を続け、再び1軍に戻ることはなかった。

 今季はリリーフとして計26試合に登板し、2勝2敗、8ホールド、防御率4.22。8月に1軍登録を抹消され、再び1軍に戻ることはなかったが、来季に向けて新たな取り組みに着手していた。高校時代やプロ入り当初に任されていた先発への再転向だ。

「投げていなかった変化球を久しぶりに投げてみたら投げられたり、ストレートも全然質が変わったりしているので。前に先発をやっていた時とは、ちょっと手札が違う感じはすごく体感していますね」

来季に向け先発への再転向を見据えている【写真:栗木一考】来季に向け先発への再転向を見据えている【写真:栗木一考】

救援で得た財産「シンプルに投げるのがうまくなった」

 本来は1試合を自らコントロールし、白黒をつけるのが吉田のスタイルだったが、日本ハム時代の2022年途中にリリーフ転向。オリックスに移籍した2024年からは中嶋聡前監督や中垣征一郎巡回ヘッドコーチ(当時)の指導で体の使い方を見直し、ポテンシャルは一気に開花した。

「基本は先発をずっとプロでやってきたんで。ただ、オリックスに来てから投げ方を教えてもらって、パフォーマンスが上がりました。ハム時代はストレートを中継ぎの時ぐらい押しているような先発だったんですよ。それを5イニング繰り返すみたいなスタイルだったんですけど、そういう感じもできるし、別に欲しい時に変化球で(ストライクを)取れる感じになっているんで。先発をやる上で心の余裕はだいぶ違いますね」

 リリーフを担ったことで得たものもあるという。

 絶体絶命のピンチでマウンドを託される「火消し」の役割が、変化球の精度を高めた。初球からストライクゾーンの厳しいコースへチェンジアップやシュートを投げ込む経験が、吉田を一つ上の次元へと引き上げた。

「シンプルに投げるのがうまくなったというのもありますし、真っすぐが良くなった分、同じレベルの変化球でも打者にはより良く見えるんだと思います。火消しで行くことが今年は特に多かったんで、絶対に間違えられないチェンジアップや、満塁の場面の初球で絶対に死球は当てられないけれど甘くてもいけないシュート……。自信がなくても使っているうちに『投げられるようになったな』という感覚を掴みました。捕手にもどんどん良くなっていると言われて、それが自信に繋がりました。その経験が生きていますね」

「火消し」の役割を担いレベルアップを果たした【写真:加治屋友輝】「火消し」の役割を担いレベルアップを果たした【写真:加治屋友輝】

先発として滲むプライド「5回で終わろうという気はない」

 今シーズン最後の登板となった9月25日のファーム・リーグ広島戦。首脳陣への直訴の思いもあり、長いイニングへの挑戦を志願した。「いけるなら4イニング全部行きたいです」と申し出て6回からマウンドに上がり、実際には3回2/3を投げた。登板後、肘の状態は悪化せず、むしろ大きな発見があったという。

「久しぶりに長いイニングを投げたので筋肉痛になりましたけど、思いきり投げている感覚がないのに、今までより平均球速が速かったんです。すごくいい投げ方ができていたんじゃないかなと思います」

 軽くリリースしても、ストレートの走りは全力で腕を振る時と変わらない。その感覚を掴んだことで、「先発のほうが意外と合っているのかな」と笑みをこぼす。「投げていて楽しかったのは先発ですね。5回で終わろうという気はない。いけるところまで、7回とかしっかり投げてというのは先発をやるなら目標にしたいです」と、マウンドを一人で支配する喜びを思い出しつつある。

 TJ手術を受けてから約1年半が経過した。日常生活では違和感のないレベルまで回復したが、全力投球した際には、引っ掛かりや痛みを感じる瞬間はあるという。しかし、パフォーマンス自体が崩れることはなくなった。

新しい感覚を得たことで自身の投球に手ごたえを感じている【写真:加治屋友輝】新しい感覚を得たことで自身の投球に手ごたえを感じている【写真:加治屋友輝】

正捕手・若月の“お墨付き”「お前いけるよ絶対」

「手術からだいたい2年ぐらいでみんなさっぱりして、急にポンって球速が上がったりするという話もありますね。今年のオフに休んだ時に違和感がすぽって抜けてくれたら、もっといいパフォーマンスができる自信はありますね。オフのトレーニングを抜きにしても、肘の状態だけでもパフォーマンスはもっと上げられるんだろうなと感じるくらいです」

 長く苦しいリハビリを乗り越え、リリーフという新たな持ち場で「手札」を増やした。来季への思いを問われると、吉田の表情がスッと引き締まった。

「手術をしてから初めてさっぱり投げられる年になるだろうし、先発になるならなおさら。オリックスに来てからも、健矢(若月)さんに『お前いけるよ絶対』とたまに言われたりして。そういう時に軽く意識しちゃったんですけど(笑)。でも、やっぱり意識するってことはやりたいんだろうなっていうのはあるんで。全力でやってみたいと思います」

 過去の栄光にも、かつての自分にも囚われない。日々進化する背番号「23」の目は、希望に満ち溢れている。真の「完全復活」を遂げる来シーズンへ。逆襲のプロローグは、すでに始まっている。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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