第1打席で松本隆、第2打席で井上絢、第3打席で西巻の登場曲を使用
DeNAの攻撃が始まる初回。1番・度会隆輝外野手が打席に向かう際に流れたのは、Bruno Marsの「24K Magic」だった。4日に横浜スタジアムで行われたレギュラーシーズン最終戦の阪神戦。聞き慣れない曲に、スタンドは少しざわついた。
四球を選んで出塁し、佐野恵太外野手の右前適時打で先制のホームイン。リードオフマンの仕事を果たした。
第2打席はBIGBANGの「BANG BANG BANG -JP Ver -」に乗って左前打を放ち、第3打席はThe Greatest Showman Castの「The Greatest Show」が本拠地に響き渡った。
実は、第1打席は松本隆之介投手、第2打席は井上絢登外野手、第3打席は西巻賢二内野手が使用している登場曲だったのだ。3人は今季限りで戦力外通告を受けて退団する。「ずっと一緒にいたメンバーなので……」。度会が思いを明かした。
「3年間一緒にやれたのは僕にとってすごく幸せなことでした」
「今年、僕とすごく仲が良かったメンバーが違うステップに行くということで、やはり寂しさもありましたし、感謝の気持ちを込めて、ああやって使わせてもらいました」
戦力外通告があったのは、9月29日。1軍は試合が空いており、この日がそれ以降初めてのホームでの試合だった。「3人には使わせてもらう前に連絡をしました」と度会。自分なりの“エール”の送り方を考えての行動だった。
松本隆は横浜高時代の同級生でもあり、高卒で2020年ドラフト3位でDeNAに入団した。指名漏れを経験した度会は、社会人の名門・ENEOSに進んで力を付け、2023年ドラフトで3球団競合の末にDeNA入り。再び同じユニホームに袖を通すことになった。
「隆之介は中学校のときから仲が良くて、高校に入ってからも毎日一緒にいました。まさかプロでまた同じチームで野球をやれるなんて思っていなかったので、3年間一緒にやれたのは僕にとってすごく幸せなことでした。その意味を込めて、1打席目に隆之介の登場曲を使わせてもらいました」
「会うと家族と会ったときにホッとするような気持ちがあった」
度重なる怪我に泣いた松本隆は、2024年10月5日の中日戦(バンテリンドーム)でプロ初登板を果たしたのがDeNAでは唯一の1軍登板となった。度会は同年10月2日に3度目の抹消となっていたため、同じグラウンドでプレーすることはできなかった。
戦力外通告を受けたあと、度会への思いを聞かれた松本隆は「本当にすごくいいヤツで、僕が怪我をしたときもすぐに連絡くれたり、すごく心配してくれている。一緒に1軍で投げられなかったのは後悔のひとつですけど、一緒に高校、プロでできたのはすごく大きかったですね」と話していた。
呼応するように、度会も「横浜スタジアムで一緒にプレーすることが2人にとっては一番の夢だったんですけど、また隆之介も違うステップに行くので、僕もしっかり頑張って、隆之介もまた新しいところでお互いに頑張れたらなと思います」と言葉に力を込めた。
戦力外通告後も連絡を取り合い、近々食事に出掛ける予定だという。「そこでいろいろな話をしたいと思っています。隆之介は本当に親友でもあるし、あいつと一緒にいると気が許せるというか、会うと家族と会ったときにホッとするような気持ちがあったので、本当に特別な存在でした。あいつと過ごしたこの3年間は本当に僕にとって宝物です」。その言葉に、確かな絆が表れていた。
24歳の誕生日はサヨナラ勝ち「何よりも勝てたのが良かったです」
「ケンティー(井上絢)も同期入団でずっと一緒にいたし、西巻さんにも本当にお世話になりました」
プロ野球界にとって、秋は別れの季節だ。翌年も同じメンバーで戦うことは、ない。それでもそれぞれの人生は続いていく。プロ3年目で自身最多の134試合に出場して、いずれもキャリアハイの打率.274、9本塁打、51打点と飛躍した度会は、きっと3人にとっても勇気をもらえるような姿だったことだろう。
チームは延長11回サヨナラ勝ちでレギュラーシーズンを締めくくった。この日が24歳の誕生日だった度会は「何よりも勝てたのが良かったです」とニッコリ。志半ばでチームを去る友たちの思いも背負い、ポストシーズンも明るく元気にチームを照らしていく。
(町田利衣 / Rie Machida)