NPB新記録も「代走だけでいいの?」 現ドラ→侍J選出も…元盗塁王ゆえの“モヤモヤ”

飯田哲也氏が振り返る今季の盗塁王争い
プロ野球はレギュラーシーズンが終わり、各部門のタイトルも決まった。現役時代にヤクルトの外野手で盗塁王を獲得した野球評論家の飯田哲也氏は「機動力」に注目。両リーグの盗塁王争いを振り返ってもらった。
セ・リーグは、昨季まで4年連続で盗塁王に輝いていた阪神の近本光司外野手が、4月下旬に左手首に死球を受け長期離脱。復帰したのは7月だった。その影響もあり“新星”が活躍。ヤクルトの岩田幸宏外野手が39盗塁で、初の栄冠を掴んだ。独立リーグ信濃から育成枠で入団した5年目、29歳の苦労人。飯田氏は古巣の後輩を「大したもんですよ」と称えた。
岩田は1軍デビューの2024年に10盗塁を記録し、昨年は126試合で14盗塁。今季は127試合で、ほぼ3倍まで数字を伸ばした。「今年から監督が池山(隆寛)さんになって、ヤクルトはバントを使わないケースが増えた。走れるヤツはどんどん走れ、と。だから岩田は期待されていましたよね。結果で応えました」。
さらなる飛躍に向けての課題は何か。「スワローズはシーズン途中から順位が下がった。優勝争いとか、もっと重圧が懸かる中でも走れるようになれば価値は高まります。あとは走者を置いた打席で、どうやって塁に残るか。前の走者がアウトになっても岩田は残るようにしたい。チームとしては走れる選手が塁に残ってくれた方がいいんです。併殺崩れでも何でも構わない。だからポーンと簡単にフライを打ち上げるような内容では駄目。それが年間で20(打席)減れば、20(回)も走れる機会が増えますから」。
巨人の浦田俊輔内野手は36盗塁。9月14日のDeNA戦で守備の際に右肘靱帯を損傷し、離脱を余儀なくされた。それでも阪神との優勝争いを繰り広げるなか、2年目の24歳が果たした役割は大きかった。「吉川(尚輝内野手)が怪我で苦しみ、他の選手にとってはチャンスでした。それを生かしました。打撃はミートが上手く、しつこい。ブレークした選手と言っていいと思います」。
広島の辰見鴻之介内野手は28盗塁。代走限定では1979年の藤瀬史朗(近鉄)が記録した25盗塁を上回る27盗塁を記録し、日本記録を塗り替えた。飯田氏は「より警戒される状況下で、この数字。そりゃあ凄いですよ」と絶賛。その上で「凄いけど、その先を見たい。代走だけでいいのか? 結局はレギュラーになりたいんでしょ。そうなれば、さらに数も増やせるはずだし、チームも辰見自身もプラスになる」と発破をかける。飯田氏は捕手で入団したが、脚力を買われ内野手を経て外野の名手にまで上り詰めた。「僕は足から1軍に入る形で定位置を獲れました。そういう道もあるんですよ」。
辰見は楽天に育成枠で入り、昨オフの現役ドラフトで広島に移籍した。まだ25歳と若く、大きな可能性を秘める。「自分に何が足りないのか考えてみること。俊足という武器を活かせる方法が他にもあるはず。打つ方なら転がせばいい。ホップ、ステップ、ジャンプなら今年はホップ。将来的にジャンプまでいって欲しいですね」と飯田氏も期待している。
4年連続の周東佑京は「三盗ももっとできる」
パ・リーグはソフトバンクの周東佑京外野手が30盗塁で、4年連続でトップの座を守った。飯田氏はホークスでのコーチ時代、ルーキー時代の周東を知っているだけに、30歳を迎えても「衰えは感じません」と太鼓判を押す。一方、実力を認めているからこそ、高いレベルでの注文も忘れない。「長打力もあるけど、要らないんだよなぁ。僕が打撃コーチなら、彼にはずーっとショートゴロを打つ練習をさせますよ。あの脚力なら楽々、一塁セーフになる。出塁が増えるから毎年50個は余裕で走れる。三盗ももっとできると思うし、見たいですね」。
周東に続く2位は、ソフトバンクの庄子雄大内野手。2年目の新鋭が22個をマークした。3連覇を果たしたうえで、周東の後釜もきっちり育ってきている。「ホークス打線だって、たまに大味で繋がらない時もある。小技がないと勝てないんですよ。2人の存在は大きい」。
辰見、庄子は11月に開催されるアジアプロ野球チャンピオンシップに臨む「侍ジャパン」のメンバーにも選ばれた。「チームの首脳陣というのは足が速い人、走れる選手は必ず居て欲しいし、使いたい。今の野球は“打て打て”の時代でホームラン、長打が目立つし騒がれます。でも細かい野球も必要なんです」。飯田氏は“走り屋”たちに、もっともっとスポットライトが当たることを願っている。
(西村大輔 / Taisuke Nishimura)