3登板から覚醒、西武・豆田泰志は何が凄い? 同僚が証言「なかなかいない」…海外修行が変えた“依存”

CS初登板で勝利投手となった西武・豆田泰志【写真:黒澤崇】CS初登板で勝利投手となった西武・豆田泰志【写真:黒澤崇】

日本ハム打線を3者凡退…カナリオのサヨナラ弾で勝利投手に

 セットアッパーが故障で戦線離脱した西武にとって、“救世主”となるかもしれない。レギュラーシーズン2位の西武は10日、本拠地ベルーナドームで同3位の日本ハムとの「2026 パーソル クライマックスシリーズ(CS) パ」ファーストステージ第1戦に臨んだ。延長10回にアレクサンダー・カナリオ外野手がサヨナラソロを放ち、3-2で先勝。CS初登板で1イニングを3者凡退で退け、勝利投手となったのが23歳右腕・豆田(まめだ)泰志投手だ。

 プロ6年目でのCS初登板は、重要な場面で巡ってきた。2-2で迎えた延長10回。相手の先頭打者は、今季打率.313で首位打者に輝き、32本塁打を量産したフランミル・レイエス外野手だった。ホームランだけは避けなければならない場面である。

 豆田がレイエスへ初球を投じる前に、古賀悠斗捕手がこう声をかけた。「初球から簡単にストライクを取ろうとするな。最悪、四球でもいい。代走で五十幡(亮汰外野手)さんが出てきたとしても、俺が刺す」

 豆田は「古賀さんの、そのひと言で気持ちが楽になりました。とにかくホームランを打たれないように、丁寧に投げようと思いました」とほほ笑む。今季、12球団で随一の盗塁阻止率.500を誇った古賀悠の言葉だからこそ、説得力もあった。

 初球はボールになる外角のスライダーで誘い、2球目は真ん中高めのスライダーでファウルを打たせた。3球目の外角低めのストレートがワンバウンドとなった後、4球目に真ん中低めの151キロのストレートで遊ゴロに仕留めたのだった。古賀悠は「最後は“打球が上がらないように、低めに投げて来い”とジェスチャーで伝えました。その通りに投げてくれました」と会心の笑みを浮かべた。続く4番・万波中正外野手、5番・矢澤宏太投手も打ち取り、最高の形で味方の攻撃に繋げた。

昨季は3登板…プエルトリコのWLで掴んだ躍進のキッカケ

 そんな豆田の性格を、古賀悠はこう分析する。

「普段は感情を表に出さず、淡々と投げるタイプです。しかし、僕のひと言で自信を持って投げられたというコメントを聞くと、これからも投げる前に何か助言してあげられれば、あいつは割り切って投げられるのかもしれないと思いますね」

同僚の古賀悠斗が見た豆田の存在【写真:黒澤崇】同僚の古賀悠斗が見た豆田の存在【写真:黒澤崇】

 名は体を表すという。「チーム内では“マメ”と呼ばれることが多いです」と豆田は笑う。173センチ、88キロと小柄ながらガッチリした体格。古賀悠が「“マメ”は何せ、投げる体力が凄いです。イニングまたぎは、チームでアイツが一番多いと思います。2イニングはもちろん、3イニングを投げることもありますからね。リリーフは1イニング限定が多い中、ああいう投手はなかなかいないのではないでしょうか」と称賛するタフネスを秘めている。まさに“豆タンク”といったところ。一方で、太くてキリっとした眉毛もトレードマークだ。

 今季は自己最多の32試合に登板して3勝0敗4ホールド2セーブ、防御率1.51の好成績。古賀悠が指摘した通り“イニングまたぎ”が多く、救援で2イニング以上投げた試合が6試合あり、うち2試合は3イニングに及んだ。8月14日のロッテ戦では、先発予定だった高橋光成投手が急きょ登板を回避し、代わりに先発して3回を2安打5奪三振無失点に抑えた。チームにとって、困った時に頼りになる存在なのだ。

 昨季はなかなか調子が上がらず、1軍登板が3試合に終わったが、シーズンオフにプエルトリコのウインターリーグへ派遣されたことが、躍進のキッカケになったという。

 昨季までは持ち味のストレートに頼りがちだったが、「プエルトリコのリーグでプレーしているキャッチャーと組んだら、スライダーやフォークを多く求められて投げました。実際に変化球で空振りを取り、ストライクゾーン内に投げることができました。お陰で変化球の精度が上がり、今季は最初から感覚がよかったです」と振り返る。古賀悠も「今年は特にスライダーで空振りを取れて、カウントも稼げる。だから自信を持って投げられているのではないでしょうか」とうなずいた。

ウインターリーグ派遣が変えた豆田の投球スタイル【写真:黒澤崇】ウインターリーグ派遣が変えた豆田の投球スタイル【写真:黒澤崇】

かつての守護神を「勝手に師匠と思って尊敬しています」

 そんな豆田は「僕としてはこのまま中継ぎで投げていって、勝ちパターンとか9回とかを任されるようになりたいです」と将来像を描いている。「勝手に増田達至さん(球団ファーム・育成付)を師匠と思い、尊敬しています」とはにかむ。

 2020年育成ドラフト4位で埼玉・浦和実高から入団した豆田は当初、西武の守護神として通算194セーブを挙げた増田氏が2軍調整の際、キャッチボールを共にすることが多かった。「練習でも手を抜かない増田さんの姿勢を、近くで見ることができました。増田さんのように、周りから『この人が打たれて負けたのなら、しかたがない』と思ってもらえる投手になりたいです」と目を輝かせる。だから、豆田は今も自身の登場曲として、ボーカルグループのベリーグッドマンが増田氏のために制作した「ライオン」を、増田氏の許可を得て使用している。

 今季24ホールド、防御率1.57と活躍したトレイ・ウィンゲンター投手が右肘炎症のため、CS目前の7日に帰国。チームに衝撃が走った。手薄になったブルペンで、豆田の役割は重要度を増している。

「延長戦で任せてもらえたのはうれしかったです。引き続き、いいところで投げたいなと思います」と意気に感じる右腕。今後の投球が楽しみだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

RECOMMEND

CATEGORY