甲斐野央に“譲った9回”「本当だったら投げていたよな」 パ新人記録も失速…西武・岩城颯空に湧いた感情

春先はルーキーながら若き守護神としてマウンドに上がった岩城颯空【写真:栗木一考】春先はルーキーながら若き守護神としてマウンドに上がった岩城颯空【写真:栗木一考】

パ新人最速記録の登板13試合目で10セーブ…1軍登板は8月15日が最後

 喜びも苦しみも味わったルーキーイヤーだった。西武のドラフト2位・岩城颯空(はくあ)投手(中大)は今季、32試合に登板し2ホールド、18セーブという成績を残した。一方で、1軍登板は8月15日のロッテ戦(ベルーナドーム)が最後。自身に代わって9回を任された甲斐野央投手の投球を、中継映像で見つめる日々を送った。

「今年のシーズンですか。前半はいい思いをできて、後半は苦しい……疲れとかわからないですけど、しんどくなってきた時に踏ん張ることができなかったっていうこともありました」

 力のある直球とキレ味鋭いスライダーで3月31日の本拠地オリックス戦でデビューし、セーブをマーク。その後も順調に結果を残し、パ・リーグ新人の最速記録となる登板13試合目での10セーブに到達した。

 若き守護神誕生にチームもファンも盛り上がったが、6月に入り調子を落とした。3試合連続で失点を喫するなど、6試合で6回を投げ、4本塁打を含む7安打7失点。月間防御率9.00と苦しみ、同24日から2軍再調整を余儀なくされた。7月24日に再昇格し、地元・富山でのオールスターゲームにも出場したが、状態は上がらず、1か月もせずに再び2軍生活に戻った。

地元・富山でのオールスターゲームに出場【写真:荒川祐史】地元・富山でのオールスターゲームに出場【写真:荒川祐史】

「調子が悪い中でも結果を出さなきゃいけないっていう世界で、うまくパフォーマンスをだせなかったっていうところは、難しさを知りました。1年を通して戦うことの難しさを知りました」

目の当たりにした甲斐野のすごさ

 新たなクローザーは甲斐野。開幕当初はセットアッパーだったが、岩城が調子を落とし始めた時期からセーブシチュエーションでの登板が増えた。経験豊富な29歳の躍動を、新人左腕は複雑な思いで見ていた。

「甲斐野さんは開幕当初はいろんな場面で投げていました。自分のカバーもしてもらいました。ポジションは固定された方が、自分の作り方とかあると思うのですが、そういう中で甲斐野さんは、いろんなところで投げてすごいなと」

 リード、同点、ピンチの流れを変えたい場面など、あらゆるシーンで結果を残していく背番号34は頼もしく映った。「僕がまあ離脱というか、打たれるようになってから、甲斐野さんが9回を投げることになって、ポジションが変わった中で、すぐに対応していて、その早さはシンプルにすごいなと思いました」。

今季は56試合に登板し防御率1.84、20ホールド23セーブを挙げた甲斐野央【写真:栗木一考】今季は56試合に登板し防御率1.84、20ホールド23セーブを挙げた甲斐野央【写真:栗木一考】

 救援陣の中でも年齢は上だった甲斐野に対し「ブルペンでの過ごし方もそうでしたが、すごい引っ張ってもらっていた」と素直に尊敬の念を口にした。

 その一方で、甲斐野の登場シーンがベルーナドームの新たな“名物”になった。「勇気100%」が流れ、ファンが大合唱する。本拠地が一瞬で盛り上がり、大歓声のなかで9回のマウンドで仁王立ちする甲斐野に「すごい」だけでは収まらない感情があったのも事実だ。

「中継を見ている中で、自分はまだちょっとしか投げていないんですけど、9回を投げていたっていう。 自分もそこにいたんだなっていうのが……なんて言うんだろう、そういう悔しさもありました。本当だったら投げていたよなっていう。甲斐野さんへのすごさを感じながら見ていました」

 偽りのない胸中だ。ルーキーイヤーを終えた左腕は今、宮崎でのフェニックス・リーグに参加している。

理想とする中村祐太のストレート

「やっぱり僕のアピールポイントというか、一番の武器は真っすぐだと思っているので、真っすぐの強さだったり、質という部分ですね。しんどくなってきてから、そういう細かいところを落とさないというところです」

岩城が理想とする速球が魅力の中村祐太【写真:加治屋友輝】岩城が理想とする速球が魅力の中村祐太【写真:加治屋友輝】

 カウントを取る球や変化球の精度など多くの課題はあるが、生命線でもある直球に、さらに磨きをかけていく。理想は同僚の中村祐太投手が投じるストレートだという。

「ファームにいた期間に、キャッチボール相手になっていただいたときがあるんですけど、球の強さや、伸びとか、本当に綺麗なボールで、そして強かったっていう。毎日それが続いていて、それにまずびっくりしました。僕も祐太さんのように、いいボールを続けて投げられるようにやりたいなと思いました。すごさが印象的でした」

 失った“場所”を取り戻すために――。岩城の2年目へ向けた戦いはすでに始まっている。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

RECOMMEND

CATEGORY