DeNA下剋上を支える“非レギュラー” ミラクル25歳の忘れぬ「後悔」と「準備」…痛感する難しさ

高1時代にアルプススタンドからの応援にとどまった甲子園で
■DeNA 8ー5 阪神(17日・甲子園)
これも、DeNAが起こした数ある“奇跡”の1つだろう。レギュラーシーズン3位のDeNAは、甲子園球場で開催された阪神との「2026 JERA クライマックスシリーズ(CS)セ」ファイナルステージを無傷の4連勝で制し、2年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。17日の第4戦では1-1の同点で迎えた4回、ドラフト5位ルーキーの成瀬脩人内野手が左中間へ勝ち越し2ランを放った。プロの試合を通じて初めて放ったオーバーフェンスが、値千金の一発となった。
「ホームランはあまり打ったことがないので、本当に入るのかわからなかったのですが、風にも乗ってくれてよかったです」。25歳の新人は試合後、報道陣の前で盛んに照れ笑いを浮かべていた。
勝てば日本シリーズ進出が決まる一戦。「7番・遊撃」でスタメン出場した成瀬は、同点の4回2死一塁で打席に入ると、カウント1-1から阪神先発の左腕・大竹耕太郎投手が真ん中高めに投じた137キロのストレートを振り抜いた。打球は甲子園の深い左中間フェンスをギリギリで越える。CSで新人が本塁打を放つのは史上8人目で、DeNAでは初めての快挙である。
東京・東海大菅生高、東海大、NTT西日本を経て、昨年のドラフト5位で入団した。遊撃手、二塁手、三塁手を高いレベルでこなせる守備力が持ち味で、本塁打を放ったのは「社会人時代の昨秋のオープン戦以来。公式戦となると社会人でも打ったことがなく、大学時代以来だと思います」と首をかしげる。
高1の夏に、東海大菅生高は甲子園で4強入りを果たしたが、成瀬自身はベンチに入れず、アルプススタンドから応援。2、3年では全国大会出場を果たせず、結局“聖地”の土を踏めずじまいだっただけに、「憧れの場所で打てたこともうれしいです」となおさら感慨深げだ。
「日本シリーズも自分にとっては1試合1試合が勝負」
もっとも、試合は成瀬の1発で決着がついたわけではなく、逆転、再逆転の激戦となった。1点ビハインドの9回2死二、三塁で逆転・決勝の中前2点適時打を放ったのは、8回に代走で登場し、そのまま二塁の守備に就いていた三森大貴内野手だった。
成瀬も三森も、不動のレギュラーではない。成瀬の“本職”のショートは、まず3年目の石上泰輝内野手が今季開幕スタメンの座を勝ち取り、6月以降はドラフト3位ルーキーの宮下朝陽内野手が長打力で猛アピールしたが、いずれも怪我で戦列を離れていった。現状は、相手の先発投手が左腕の場合は右打ちの成瀬、右腕の場合は左打ちの林琢真がスタメンに名を連ねることが多い。
成瀬はこう腹を括っている。「三森さんのように途中から出ていった選手が結果を出すことは、本当に素晴らしいと思います。自分も林さんとスタメンを変わったりしていますが、途中から出たり、たまに出ることは、ずっと出続けるより難しいと感じています。それでも常に結果を出さなければいけない立場なので、あの時こうしておけばよかったと後悔しないように、しっかり準備をしながら日々を送りたいと考えています」
歓喜のナインの中にあって、“非レギュラー”の選手たちは手放しで喜んでばかりもいられない。成瀬は「これから始まる日本シリーズも、自分にとっては1試合1試合が勝負。本当に生き残るためにアピールしなければいけない立場なので、しっかり準備をして戦っていきたいと思います」と表情を引き締める。
こういう選手の必死さが実を結び、たびたびヒーローになるところも、チーム内競争の激しい今季のDeNAの強みの1つだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)