HR激減…大谷翔平、異変の“正体” 最後に口にした「引き出し」とは何か…数字が映す苦闘の中身

実は空振り率が改善…vs直球の長打率は.422に低下
2026年の最終打席は、あっけなく3球三振で終わった――58日ぶりの本塁打を放った夜、ドジャース・大谷翔平投手が口にしたのは、自らの「引き出し」の少なさだった。大谷ほどの選手が、何を足りないと感じていたのか。
10月15日(日本時間16日)、ブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズ第4戦。1点を追う7回1死三塁で、左腕アーロン・アシュビーの初球のスライダーはファウル。高速シンカーに空振りし、最後は外角低めのスライダーを追った。2回には3ランを放ち、バットを放り投げてチームを鼓舞したが、ドジャースは4点のリードを守れず、4連敗で敗退した。
「あの一本ぐらいだった」と振り返った大谷は「まず投げられていない時点で、この時期にそういう状態になっていること自体が良くないです」と登板できなかったことに加え、「その中での解決策というか引き出しみたいなものがやはり少ないなと感じた最後の1か月ちょっとぐらいではある」とした。体の状態も含めた反省と読める。そして、その一端を打撃に絞って見ると、昨季までとの違いが浮かんでくる。
55本塁打を放った昨季より、実は空振り自体は減っていた。レギュラーシーズンのスイングに占める空振り割合は33.4%から31.7%へ低下し、三振率も改善した。一方で、長打になりやすい速度と角度を備えた「バレル」打球の割合は、昨季から約3割低下。フォーシームへの長打率は、過去2年とも6割台だったのが、今季は.422に落ちた。バットに当たる割合の改善が、持ち味の長打力にはつながらなかった。
甘いコースでの変化も見逃せない。MLB公式データサイト「ベースボール・サバント」は、打球や空振り、見逃しなど一球ごとの結果を、得点への貢献度を示す指標「ランバリュー」に換算している。ストライクゾーン中央寄りでは、昨季の「+22」から今季は「-9」へと沈んだ。ボール球を追う割合が増えた一方、打者が優位をつくりたいコースでも、昨季ほど得点貢献を生み出せなかった。
左腕のスライダーにも苦しんだ。打率は昨季の.364から.156へ低下。両年とも30打数余りの比較ではあるが、前年は安打にしていた球種で結果が出なかった。一方でスイーパーには前年以上の打率を残しており、「左の変化球」と一括りにはできない。
ただ終盤になると、不振は左右を問わず続いた。30号を放った翌日の8月19日から終戦まで、ポストシーズンを含む打率は対左.162、対右.169。最後の約2か月は、左腕との相性だけでは説明できない。

最後の2試合に復調の兆し
右上腕や左膝の不調で9月には負傷者リストに入った。復帰後の5試合を終えた9月27日(同28日)、デーブ・ロバーツ監督は「ここからの1週間が大事になる」と話した。大谷も地区シリーズ開幕前には、実戦形式の練習と休養を取り入れた期間を「充実した数日間だったと思う」と振り返っていた。
10月13日の会見でも、大谷は日々スイングの感覚を試していると説明した。その夜は午後9時まで打ち込んだと、ロバーツ監督が明かしている。監督は翌日の打席内容も踏まえ、第4戦では1番に戻した。5度打席に立ち、勝つチャンスをつくってくれると期待をかけた。
最後の2試合には、速い球を捉える場面があった。8月19日以降、95マイル(約153キロ)以上の球に対しては、ポストシーズンを含め31打数3安打。そのうち2本が、第3戦と第4戦に生まれた。左腕ホールのシンカーを中前へ弾き返し、翌日は右腕メイのカットボールをスタンドへ運んだ。
だが、第4戦は本塁打後の2打席を、いずれも左腕に3球で封じられた。5回はロメロのスイーパーに見逃し三振。そして7回、アシュビーに空振り三振。9回、ネクストバッターズサークルで待つ大谷に、監督が望んだ5度目の打席は回ってこなかった。
これまで野球に真摯に打ち込み、前人未到の二刀流で自らが歴史そのものになった。MVP受賞回数はすでに歴代単独2位の4回を数え、今季も候補に挙げられている。10年総額7億ドル(当時1014億円)の契約を結んでもなお、慢心せずに自らを追い込んでいる。
大谷の基準からすれば、今季の成績は“期待外れ”とも言えるかもしれないが、打撃に限ればチーム10冠王だ。それでもなお、最後に語ったのは「これからの頑張り次第」だった。常に自分に足りないものを見つめ、努力を重ねようとする。2027年の大谷は、新たな「引き出し」を見つけてさらに成長した姿を見せてくれるはずだ。
(新井裕貴 / Yuki Arai)