「あと1球コール」は選手にどう影響? 阪神OBが明かす実体験…工藤が崩れた“別の要因”

「神経が図太い藤川球児、久保田智之には全く関係なかった」
レギュラーシーズンでリーグ連覇を果たした阪神が、「2026 JERA クライマックスシリーズ(CS) セ」ファイナルステージでシーズン3位のDeNAに4連敗を喫し、日本シリーズ進出を逃した後、大きな話題を呼んだのが“あと1球コール”の是非だった。猛虎の本拠地・甲子園球場で伝統となっている受け取る選手たちは実際のところ、どう感じているのだろうか。“経験者”に聞いてみた。
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「相手に失礼だし、味方にもプレッシャーになっているから、あと1球コールは本当にやめましょうよ」
「あと1球コールで追い込まれたのは、工藤選手だったなあ」
「あと1敗でCS敗退、1打逆転の場面でよくできるな、あと1球コール」
阪神敗退後、「あと1球コール」を巡ってSNS上ではこんな声が溢れかえった。場面を振り返ってみよう。DeNAが日本シリーズ進出に王手をかけて迎えた17日の第4戦。阪神は5-4と1点リードして9回の守備に就いた。マウンドには、8回無死一、二塁のピンチで登板した工藤泰成投手がそのまま上がった。
「あと1球、あと1球」
2死二、三塁のピンチを背負い、打席に三森大貴内野手を迎えた。カウント0-2に追い込むと、4万2648人の観客を飲み込んだスタンドに響く大歓声は、“あと1人コール”から“あと1球コール”に変わった。しかし、工藤は3球目の外角高めのストレートを三森に中前へ打ち返され、走者2人が生還し逆転。工藤はがっくりと右膝を地面につけた。
現役時代に2003年から2008年まで6年間捕手として阪神でプレーし、他球団を含めてプロで通算21年間活躍した野球評論家・野口寿浩氏はこう語る。
「(あと1球コールは)味方のファンからの声援ですから、僕らに悪い影響はありませんでした。マウンド上の投手も、当時クローザーを務めていたのは、(藤川)球児(監督)とか、久保田(智之2軍投手チーフコーチ)といった、抑えの役割にキャリアも慣れもあって、神経も図太いやつらでしたから、全く関係なかったと思います」

「7回を投げ切った木下を8回に続投させた“継投ミス”が全て」
「ただ……」と野口氏は続ける。「あの時の工藤に関して言うと、チームが3連敗を喫していて、負けたら敗退という状況でイニングまたぎをして、あのピンチとなれば、物凄いプレッシャーがあったと思います。球場も異様な雰囲気だったはずです」。
そんな特殊な状況だったからこそ、あと1球コールがプレッシャーを増幅させた可能性は「あったかもしれないですね」とうなずく。
ファイナルステージ4試合を振り返り、野口氏は「第4戦にさえ勝っていたら、逆転で阪神が日本シリーズに行っていたと僕は思います」と野口氏は言う。「第4戦の継投ミスが全て。結果論ではなく、7回を投げ切った木下(里都投手)を8回も続投させたことは、間違いだったと思います」と自説を展開する。
3-3の同点で迎えた7回に登場した木下は、1死から四球を与えたものの、この回を無失点でしのいだ。その裏に味方打線が森下翔太外野手のソロアーチなどで2点を勝ち越しに成功した。木下は8回も続投したが、2四死球を与えてピンチを招き。宮崎敏郎内野手の適時打で1点差に迫られた。
なおも無死一、二塁のピンチを残して、クローザーの工藤の救援を仰いだ。工藤は登場が前倒しになったことで、9回との“イニングまたぎ”を余儀なくされることになった。木下が2イニング目のマウンドに立った8回冒頭の時点で、ブルペンにはまだ石井大智投手も、岩崎優投手も、ラファエル・ドリス投手も、及川雅貴投手もいた。
野口氏は「プロ2年目でCS初登板の木下は7回にも四球を出し、なんとか無失点で帰ってきたけれど、そこからもう1イニングは酷です。レギュラーシーズンの終盤に何度か“イニングまたぎ”を経験し、うまく行っていたから任せたのでしょうが、状況が違います」と指摘する。
「経験豊富なリリーバーが何人もいたのに、なぜ使わなかったのか。木下、工藤以外の投手を信用し切れないのなら、8回は打者1人ごとに投手を1人ずつ起用するとか、ちょっと調子が悪いと思ったら他の投手に替えるとか、やり方はあったと思うのですが……」と“木下続投”を惜しんだ。
議論を呼んだ“あと1球コール”と、最後の最後に壁にぶつかった格好の“最速160キロ超コンビ”木下&工藤。それぞれ、来季以降の行方が気になる。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)