CSファーストSで15打数2安打の不振…西口監督が呈した苦言
西武の渡部聖弥外野手はプロ1年目の昨季に続き、サードにコンバートされた今季も規定打席をクリアし、パワフルな打撃で存在感を放った。しかし、首脳陣が期待する姿はこの程度ではない。クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージでは“敗因扱い”もされた。本人は「これほどの悔しさを味わうことは、なかなか無い」と屈辱を噛み締め、秋季練習が行われている今も「悔しさがあるからこそ、(全体練習終了後に)残ってバットを振ることができる」と巻き返しを誓っている。
これも高い期待の裏返しであることは間違いない。
西武は今月10日、日本ハムとのCSファーストステージ第1戦で、延長10回にアレクサンダー・カナリオ外野手のサヨナラ本塁打が飛び出し先勝。しかし西口文也監督は試合後、同点の8回1死一、三塁で5番の渡部がカウント2-0から好球を見逃し、2-2から内角球を打って二ゴロ併殺に倒れた場面をあえて取り上げ、「(カウント2-0から)あそこを思い切って振ってほしかった」と苦言を呈した。
翌11日の第2戦でも、7番で出場した渡部は1点ビハインドの5回1死一、二塁で見逃し三振に倒れた。チームは零封負けを喫し、西口監督は「昨日の今日で聖弥が違う姿を見せてくれるかと思ったけれど、腹がくくれていないように見えた」と再び名前を挙げたのだった。
西武は結局、1勝2敗でファーストステージ敗退。渡部は3試合で15打数2安打と振るわなかった。「チャンスでことごとく自分に回ってきたので、悔しかったです。一方で、他の人が経験できないことを経験できた、という思いもあります。来シーズンへ向けて何とかしなければと、突き動かされるものがあります」と力を込める。
仁志コーチ「ホームランも20本は絶対打てるはず」
レギュラーシーズンでは129試合に出場し、打率.255(リーグ20位)、12本塁打、48打点。昨季の打率.259(同16位)、12本塁打、43打点と似た数字だった。仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチはこう評した。
「去年とあまり変わりがなかった。変わりがなかったことを、ちょっと考えないといけない。本人にも伝えたのですが、来年は明確な目標を設定して、1年間継続してやっていこうと思っています。本来ならもうちょっと……いや、ちょっとではないな。最低でも打率2割7~8分、ホームランも20本は絶対打てるはず。コンタクトする確率が上がれば、全部解消されると思います」
打順は、レギュラーシーズンではクリーンアップを71試合担った。昨季はなかった4番で5試合に出場した他、3番を35試合、5番を31試合。しかし、CS3試合では5番→7番→9番と下がっていった。仁志コーチは「チームの中心にならなければいけない選手なので、責任を負ってもらわないといけない。来年はクリーンアップに固定できるようになってほしいです。今年は最後の最後に中心になれなかったこと、責任を背負わせてもらえなかったことを反省してほしいです」と自覚を求める。
渡部自身も「今年が“底”だと思うので、あとは上がるだけかなと思います。ヒントは1試合1試合にある気がしていて、自分がもっと繊細に、アンテナを張ってやっていく中でいいものが定着すれば、イケるという感触は自分の中にあります」とうなずく。
今季はサードへのコンバートという同情すべき状況もあった。昨季守備に就いたのはレフトのみ(102試合に先発、他に指名打者で6試合出場)だったが、桑原将志外野手らが加入した今季は、チーム事情で「大学(大商大)時代には4年生の時に1シーズンやっただけ」というサードに回った。春季キャンプの段階で西口監督から「今年はサード1本。他のポジションで使うつもりは全くない」と通達された。
「最初は(打球に対して)一歩目のスタートを切るのが遅くて守備範囲が狭く、前の打球に対しても余裕がなかったです」と振り返る。さらに、アマチュア時代とは、飛んでくる打球の速さ、強さがアマチュア時代とは桁違いだった。本拠地ベルーナドームでは、人工芝部分とベース周辺のアンツーカー(人工土)部分でゴロのバウンドが変わることに戸惑った。
外野から三塁にコンバート「最初は恐怖心がありました」
「ボールが大きく跳ねる可能性を頭で想定しつつ、跳ねないことを前提にグラブを下から出さないといけない。跳ねると思うとグラブが浮いて、ボールは下を通過してしまいますから」と説明する。イレギュラーを怖がっていては打球を捕れない。「練習で大きく跳ねて、ボールが体に当たったり、顔のそばを通過したりすることがあって、最初は恐怖心がありました」と明かす。
今季の失策数は11。打撃にも影響を及ぼした。「エラーをすれば、もちろん悔しいですし、打撃で返さないといけないと思うと、逆に焦りが出てしまったりしました」。
それでも、1シーズンかけて徐々に上達し、恐怖心も克服。8月9日のソフトバンク戦ではイレギュラーした打球を左目付近に受け、「左眼窩底(がんがてい)骨折」で15日間チームを離れたが、「あの時はもう精神的に割り切れていた時期だったので、後を引くことはありませんでした」と頼もしい。
来季は常時クリーンアップを担う強打の三塁手として、ひと皮むけた姿を見せなければならない。「離脱なくシーズンを全うすることが第一で、20本塁打は打ちたいです。打率のように上がったり下がったりするものは、あえて目標に掲げない方がいいかなと思います。ホームラン優先で自分のスイングをして、振るべきところを振っていけば、自ずと打率も残るのではないかと思います」と腹は決まりつつある。
スターダムへのアプローチが始まる。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)