阪神・佐藤輝明の米挑戦に思うこと…球団が背中を押した3冠王の“背景” 20年前の松坂大輔とは違う事情

誰もが頼った「SATO 8」の背中…米挑戦で見られなくなるのか【写真:黒澤崇】誰もが頼った「SATO 8」の背中…米挑戦で見られなくなるのか【写真:黒澤崇】

阪神は佐藤輝明内野手のポスティングによるメジャー挑戦を容認

 阪神は19日に嶌村聡球団本部長が西宮市内で会見を開き、佐藤輝明内野手のポスティングによるメジャー挑戦を容認すると発表した。今季は打率.306、39本塁打、106打点で史上9人目の3冠王。米国の反応は早く、MLB公式サイトは「実績や年齢を考慮すると、今オフの市場で最も魅力的な打者の一人になる」と伝えた。

 筆者はこのニュースを聞いたとき20年前の秋を思い出していた。2006年オフ、西武・松坂大輔は、かねてからの夢だったメジャー挑戦を球団に申し入れ、ポスティングシステムによる海外移籍が認められた。

 この年は17勝5敗、防御率2.13を記録し、同年3月の第1回WBCでも日本の優勝に貢献して大会MVPを受賞。米球界からの評価は極めて高かった。米誌の記者から「マツザカはジャイロボールを本当に投げられるのか?」と、よく聞かれたことを記憶している。

 11月にはレッドソックスが5111万1111ドル11セント(当時約60億円)という破格の入札額で独占交渉権を獲得した。代理人スコット・ボラス氏との交渉は難航したが、12月14日に6年総額5200万ドル(同約61億円)で契約が成立。総額100億円を超える、当時としては破格の契約で「平成の怪物」は海を渡った。

ポスティングシステムを利用しレッドソックスに入団した松坂大輔氏【写真:産経新聞社 】ポスティングシステムを利用しレッドソックスに入団した松坂大輔氏【写真:産経新聞社 】

かつては封印入札…大きく変わったポスティング制度

 あれから20年。ポスティングという制度は別物になった。

 2006年当時は封印入札方式で、最も高い額を示した球団だけが独占交渉権を得た。交渉期間は30日。松坂の落札額は5111万1111ドル11セント、契約は6年5200万ドルで、譲渡金込みの総額は約1億311万ドルに達した。素晴らしい内容ではあるのだが、メジャーに挑戦する選手本人に球団を選ぶ余地は、ほぼなかった。

 いまは違う。佐藤輝は申請後45日間、MLBで獲得の意思のある球団が手を挙げれば全球団と自由に交渉が可能だ。阪神に入る譲渡金も契約額に応じて20%、17.5%、15%の段階制になった。

 現在のところ、予想ではあるが6年190億円レベルの契約という声があがっている。そうすれば概算で阪神には30億円ほどが入ることになる。ちなみに、20年前の松坂は落札金額の約60億円を“恩返し”という形で西武に残しているのだが……。

3冠王となった打棒で甲子園を何度も沸かせた【写真:井上学】3冠王となった打棒で甲子園を何度も沸かせた【写真:井上学】

阪神・嶌村球団本部長がみせた関係者、ファンへの配慮

 今回、阪神球団が判断基準に挙げたのはファンの存在だった。嶌村本部長は「周りで支えていただいている皆様方に後押ししてもらえる状況、環境になったかどうか、これがポイントだと考えていました」と説明。「選手の強い要望だけで容認するということはない。総合的な決断」と語った。

 海外FA権の取得は最短でも2029年シーズン。阪神ファン、世論も意識しFAを待たずにポスティングで3冠王を送り出すという決断に至った。

「最も魅力的」な選手としてメジャー移籍の目玉となる佐藤。2000年オフにマリナーズへ移籍したイチローや松坂の時代と比較することに意味はないかもしれないが、先人たちの残した足跡があってポスティング制度のルール改正が重ねられ現在がある。

 さて佐藤の行き先はいかに。11月1日以降、12月15日までの期間に交渉開始日が決定され、そこから45日の期間に運命が決まる。

(楊枝秀基 / HideKi Youji)

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