指名漏れたら「すぐ練習いくべき」 消えていく笑顔…「5/11」が夢敗れる、会見場の光と影

ドラフト会議中は徳島の会見場では様々な感情が入り乱れた【写真:喜岡桜】
ドラフト会議中は徳島の会見場では様々な感情が入り乱れた【写真:喜岡桜】

四国IL・徳島を率いて6年目の岡本哲司監督

 プロ野球選手を生業にしようとする人にとっての「運命の日」。今年も22日に「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が開催された。昨年を上回る支配下選手76人、育成選手51人の交渉権の行方が決まった一方で、NPBの12球団から最後まで名前を呼ばれることなく夢に破れた選手たちも多くいる。

 四国IL・徳島インディゴソックスでは、阪神から7巡目に石井康輝投手が、ヤクルトから7巡目に渡邊隼輔内野手が指名されるなど育成ドラフトを含め6人がNPB入りを果たした一方で、5人が指名漏れした。同球団では毎年、調査書が届いた選手たちが一般非公開の指名待ち会場で、チームメート、スポンサー企業の社員やボランティアスタッフらと指名待ちをしている。名前が呼ばれた瞬間に盛り上がりをみせ、喜びの握手やハグが交わされた。

 地域リーグ(前独立リーグ)の場合、本指名が終わり、育成ドラフトが始まるとピリピリとした緊張感が増す。2019年夏に甲子園を制した履正社の優勝メンバーで、明大OBの池田凛外野手は、同大の後輩4人が指名されるたびに喜び、現在の同僚の指名にも白い歯を見せて祝福した。しかし、自分自身が名前を呼ばれることはなかった。

 若い選手は、はじめこそ余裕があったものの、同じポジションの選手が指名されると眉間にしわを寄せて「やばい、やばい」と口を動かし、「選択終了」の文字に顔をゆがませた。指名漏れによる深い悲しみの中にいる選手たちは、どのように現実を受け止め、前に進むべきだろうか。2021年から同チームを率いて28人をNPBへ輩出し、多くの夢破れた“独立リーガー”たちも見てきた岡本哲司監督は、穏やかな口調でこう語る。

「今回のドラフト指名を目指したことで、財産はもう得ている」

「大きな人生という枠組みで考えると、ドラフト会議というのは人生の全部ではないんです。人生80年のうちの数年。プロを目指して、そこに辿り着けなかったという事実もまた1つの財産になるんです。指名漏れしたという経験は、野球を続けるならそのための財産になるし、違う道を選ぶなら、その道で必ず大物になるための財産にもなるはずです」

 同球団で2017年まで外野手としてプレーし、その後はコーチとして野手の育成に力を注いできた橋本球児コーチは「続ける意思があるなら、指名漏れが分かったらすぐに練習に行くべき。落ち込んでいる時間や、気持ちを整理する時間はいらないと思います」。厳しくも思える言葉に、ある思いが込められていた。

「考える時間があると(指名漏れのショックで)また1年先かとか、指名された奴いいなとか余計なことを考えてしまって、そんな感情の中で『もう辞めようかな』と気持ちが切れちゃうのはよくあることなんですよ。なにも考えないようにするために、気持ちをすぐに切り替えるために、今晩すぐに練習をするべきだと思います。気持ちがブレる前に」

 育成ドラフトの全選手の選択指名が終わると、夢を叶えた選手も、そうでなかった選手も「運命の日」に向かって切磋琢磨した日々を労う言葉を自然に交わしていた。会場には嬉し涙だけが流れ、悔し涙は、仲間を祝福する笑顔の裏に“隠されて”いた。場所を移して開かれた指名記者会見を、目に焼き付けている選手の姿もあった。

 2027年に再チャレンジする選手もいれば、今シーズン限りでユニホームを脱ぐ選手もいる。岡本監督は「今回のドラフト指名を目指したことで、財産はもう得ていると思います。その財産をこれからどう使っていくかです」とエールを送った。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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