シーズン中なのに「車の免許を取りに」 出番激減で「蚊帳の外」…球団に直訴「出してくれ」

元阪急・山沖之彦氏【写真:山口真司】
元阪急・山沖之彦氏【写真:山口真司】

年々減る出番…プロ12年目は5登板に終わった山沖之彦氏

 元オリックス右腕の山沖之彦氏はプロ11年目の1992年、わずか8登板で4勝3敗だった。続く12年目の1993年はさらに出番が減って5登板、1勝1敗で終了。「別に怪我とかじゃない。もう自分は(先発要員の)数に入っていなかったと思う」。ずっとエース格として奮闘してきただけに、あまりにも使われない現実には虚しさが募るばかり。登板機会を求め、他球団への移籍も志願したという。

 プロ10年目の1991年は24登板で9勝7敗の成績を残した山沖氏だが、翌年からの2シーズンは登板数がガクンと減った。1992年はシーズン初登板が6月14日のロッテ戦(千葉)で、4回2/3を2失点で敗戦投手。そこから中6日で先発した6月21日の日本ハム戦(東京ドーム)は8回2失点の完投負けと、打線との巡り合わせだけで内容的には決して悪くなかったが、3登板目は約1か月半後の8月5日の日本ハム戦(米子)の先発だった。

「毎年のようにふくらはぎは痛めていたので、6月まで投げていなかったのは多分それだと思いますけど、あとは怪我らしい怪我というのは……。まぁ、ピッチャーがいっぱいおったから投げる順番が来なかったということだと思う。この頃も(試合前の練習で)バッティングピッチャーとかをして帰っていたと思いますよ」と、山沖氏は何とも言えない表情で当時の状況を説明した。シーズン初白星は4登板目の8月14日の日本ハム戦(東京ドーム)で、3失点完投勝利だった。

 出番さえあれば、まだまだやれる。山沖氏は続く5登板目の8月25日のロッテ戦(千葉)で、8回2/3を4失点で2勝目を挙げると、6登板目の9月1日の日本ハム戦(神戸)は無四球3失点完投で3勝目と意地を見せた。だが、7登板目の9月7日のロッテ戦(神戸)で、3回1/3を5失点で敗戦投手になると、また、しばらく出番がなくなった。8登板目は中15日先発の9月23日の近鉄戦(神戸)となり、7回無失点で4勝目。それがこの年のラスト登板だった。

「確か、この年だったかな。車の免許を取りに行ったのは。もう優勝はなかったし、9月に『今シーズンはもういいよ』って言われて、やることがなかったんでね。だってグラウンドにも行かなくていいんですもん」。何かしら釈然としないままシーズンを終えたようだが、翌1993年はさらに状況が悪くなった。開幕6戦目(4月16日の日本ハム戦、東京ドーム)に先発し、勝ち星こそつかなかったが6回2/3を無失点と好投した。だが4月の出番はそれだけだった。

移籍志願から残留へ…決め手は山田久志コーチの言葉

 史上88人目の1000奪三振を近鉄のRJ・レイノルズ外野手から記録した5月8日の近鉄戦(神戸)が2登板目で、4回2/3を自責点2で敗戦投手になると、8月29日の近鉄戦(神戸)まで3か月以上も1軍のマウンドに上がることはなかった。「この時も怪我はしていなかったですよ。2軍に行ったことはあったけど、それも2軍選手という感じじゃなくて、居残り組っていう形だったと思う。まぁ投手コーチがね、自分を大事にしてくれたんですよ」。

 1993年の山沖氏は4登板目の9月13日のロッテ戦(千葉)で7回1失点と好投してシーズン初勝利を挙げた。続く9月27日のロッテ戦(神戸)でも6回1失点と勝ち投手の権利を持って降板したが、リリーフ陣が打たれて白星を逃し、以降登板なし。成績は5登板で1勝1敗、防御率1.88だった。「自分は蚊帳の外やなと思った。まぁ、オリックス自体、阪急の色をなくそうとしていたのかもわからないけどね」。

 あまりの状況に山沖氏は球団フロントに他球団への移籍を要望した。「オリックスになってからは、ずっと言っているようなもんでしたけど、あの年もこんなに出番がなかったら、もうトレードに出してくれ、と言いました」。

 土井正三監督がこの年限りで退任。仰木彬氏が監督に就任して体制が変わっても「出たい」という気持ちだったそうだ。だが、踏みとどまった。「山田(久志)さんが『もう一回一緒にやろう。俺が出番を作るから』と言ってくれて、それなら『わかりました』となったんです」。

 仰木体制で新たに投手コーチとなった阪急の大エースで、大先輩の山田氏の言葉がうれしかったし、意気に感じたのだ。「実際に山田さんは出番を作ってくれたんですよ」。プロ13年目の1994年、山沖氏は21登板で7勝をマークし、トレード志願を封印したかいがあったように思われた。だが、その後に、まさかの展開が……。最終的にはFAで阪神に移籍する“激動のオフ”がやってくる。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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