ド軍は佐藤輝明獲りに参戦するのか? 編成トップの前向き発言も抱える問題点…裏にある“厄介な事情”

ドジャースが阪神・佐藤輝明を獲得する可能性は?【写真:加治屋友輝】ドジャースが阪神・佐藤輝明を獲得する可能性は?【写真:加治屋友輝】

ド軍フリードマン編成本部長「今後も議論や検討を重ねていく」

 ドジャースは阪神の主砲・佐藤輝明内野手の争奪戦に本格参戦するのだろうか。ロサンゼルスで現地取材を続ける中で米スポーツメディア「ジ・アスレチック」のファビアン・アルダヤ記者に話を聞くと、獲得への関心を示しつつも、実際に加入した場合に生じる「大きな問題点」を冷静に指摘した。

 ドジャースのチーム編成を仕切るアンドリュー・フリードマン編成本部長は、佐藤らNPBの精鋭たちについて「個別の選手について具体的にお話しすることは難しい」と前置きしつつも、こう言及している。

「私たちはNPBとそこに所属する選手のレベルの高さを非常に高く評価している。常に注視し、スカウティングを行っているリーグだ。ポスティング等でメジャーに挑戦する可能性のある非常に才能豊かな選手が数人いることは把握しており、今後も社内で議論や検討を重ねていく。当球団のスカウト陣は情報収集と評価において素晴らしい仕事をしており、こちらのメジャー選手と同等レベルのデータやレポートが揃っている。今後の動向を注視し、議論を深めていくことを楽しみにしている」

 かつて大谷翔平や山本由伸、佐々木朗希らの獲得時にも「日本をドジャーブルーに染めたい」と意気込みを語っていたドジャース。アルダヤ記者も「日本人選手をさらに獲得することは問題どころか、むしろチームが掲げる目的に近い」と語る通り、ブランド戦略や次世代のスター獲得に向けたサイクルとして、佐藤のような大物の日本人打者への関心自体は十分に筋が通っている。

 加えて、ドジャースが抱える「年齢構造」の課題も佐藤獲得の後押しとなり得る。一塁のフレディ・フリーマンは37歳、三塁のマックス・マンシーは36歳と主力野手陣の高齢化が進む中、来年3月13日で28歳を迎える佐藤の若さとスケールの大きな打撃は、世代交代を見据えるチームの補強ポイントに見事に合致する。

 アルダヤ記者の脳裏には、2025年3月に東京ドームで行われたMLBプレシーズンゲームで、佐藤がサイ・ヤング賞左腕ブレイク・スネルから放った衝撃の一発が今も鮮烈に残っているという。「数試合しか生で見ていないが、スネルからの本塁打は非常にインパクトがあった。日本での素晴らしい実績を見ても、メジャーで十分に通用するタイプの打者だ」と潜在能力への評価は極めて高い。

2025年3月のMLBプレシーズンゲームでブレイク・スネルから本塁打を放った【写真:荒川祐史】2025年3月のMLBプレシーズンゲームでブレイク・スネルから本塁打を放った【写真:荒川祐史】

 メジャー選手と同等レベルの精密なレポート、主力野手の若返りという明確なメリット。そして、サイ・ヤング賞投手撃ちで証明した規格外のパワー。一見するとドジャース移籍へのシナリオは着々と整っているかに思える。だが、現地取材を進める中で見えてきたのは、ドジャースが積極的な争奪戦から一歩引く可能性も示唆される、あまりにもリアルで厄介な事情だった――。

岡本&村上の活躍で佐藤の年俸相場は高騰

 ドジャースが佐藤の獲得調査を進めつつも、最終的に静観を選ぶ可能性がある最大の理由。それは「ポジションのフィット感のなさ」という壁だ。

 いくら将来的な世代交代が必要とはいえ、現在のドジャースのロースターを見渡すと、三塁にマンシー、外野の両翼にはテオスカー・ヘルナンデス、カイル・タッカーが君臨している。さらに若手にも9月にメジャーデビューしたホスエ・デポーラ、マイナーには多くの若手有望株を抱えており、佐藤の主戦場であるポジションは現在進行形で完全に埋まっているのが実情だ。

 仮に加入した場合の起用法について、アルダヤ記者は「サードやレフトを守らせたり、オオタニがDHを休む日にDHで起用したりと、かなり変則的で柔軟な運用が必要になる」と解説する。つまり、レギュラーとして固定枠を用意することが難しく、日替わりでポジションを転々とする“起用法の難題”が生まれてしまうのだ。

 どれほど強力なスカウティング組織が「メジャー同等のデータ」を揃えていようと、ドジャースのフロントオフィスは非常に合理的かつクールな計算で動くことで知られている。アルダヤ記者は「明確なロースターの枠がない選手に対して、市場価格が高騰した際にわざわざ他球団とのマネーゲームに参戦してまで競り落とすかと言えば、そこは懐疑的だ」と分析する。

MLB1年目から結果を残したWソックス・村上宗隆(左)とBジェイズ・岡本和真【写真:ロイター】MLB1年目から結果を残したWソックス・村上宗隆(左)とBジェイズ・岡本和真【写真:ロイター】

 ブルージェイズ・岡本和真やホワイトソックス・村上宗隆といったNPB出身の主砲たちがメジャー移籍1年目から即座に結果を残したことで、米国における日本のパワーヒッターへの評価と市場価値は跳ね上がっている。そうした追い風によって佐藤の年俸相場が高騰すればするほど、絶対的なポジションの空きがないドジャースにとっては過度なマネーゲームを避け、途中で撤退を選択するシナリオも現実味を帯びてくる。

 トップが口にする「徹底的なスカウティング」という歓迎の言葉と、現場が抱える「起用法の厄介さ」というリアルな課題。スネルを打ち砕いたロマン砲の未来は、ドジャーブルーか、あるいは他球団のユニホームか。今後の市場の動きから目が離せない。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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