呼ばれない名前「もう指名ないんやな…」 折れかけた心…涙を流した117番目の指名

高川学園・木下瑛二【写真:加治屋友輝】
高川学園・木下瑛二【写真:加治屋友輝】

ソフトバンクから育成ドラフト6巡目に指名された高川学園・木下

 全身の力が一気に抜けていった。22日に「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が開かれ、2025年夏から3季連続で甲子園へ出場し、プロ一本を公言していた高川学園高(山口)のエース・木下瑛二投手がソフトバンクから育成6巡目で指名された。最速147キロを投じる18歳は「もう指名無いんやなって思いました」と短く漏らした。

 香川県高松市出身の木下は、小学生だった2020年に阪神タイガースジュニアチームのセレクションに合格して、プロへの登竜門とも呼ばれる「NPBジュニアトーナメント」に出場。父・耕三さんは「あの大会で全国から選ばれた選手たちと戦えたことで、瑛二は“現在地”を知ることができたと思います」と振り返る。

 中学硬式野球チーム「高松庵治ヤングストーンズ」では下級生のときから主力として活躍し、春・夏・秋に全国大会を経験。複数の強豪校から勧誘を受け、進んだ高川学園でもエースとして2025年夏から2026年夏まで3季連続で甲子園の土を踏んだ。「天才中学生」「ドラフト上位候補」とも称された木下のもとにはこの秋、複数球団から調査書が届いていた。

 ドラフト会議当日は学校で運動会があり、紫チームの団長を務めた。「6チーム中の5位でした。ムカデリレーと高川旋風っていうやつと綱引きと。あと部活動対抗リレーも。こけたりバトンを落としたりして5位でした」。級友らと大騒ぎするなか、閉会が迫るにつれて少しずつ緊張感が増した。

ソフトバンクから育成ドラフト6巡目に指名された高川学園・木下瑛二【写真:加治屋友輝】
ソフトバンクから育成ドラフト6巡目に指名された高川学園・木下瑛二【写真:加治屋友輝】

127人中、木下の名前が呼ばれたのは117番目「本当に悔しい」

 ドラフト会議が始まり、学内の講堂にプロ志望届を提出した木下と若藤芽空(わかとう・ひそか)内野手が最前列に座り、その周りにチームメイトが着席した。緊張がほぐれたのは育成ドラフト開始から間もなく。1巡目で若藤がロッテから指名された。だが、木下の指名はまだない。再び静かになった講堂で、木下は表情を暗くしていた。

「指名される気配がないから『もう終わったな』って思っていました。育成の3巡目くらいに『もう指名ないんやな』って」。プロになるために、高校卒業までのサポートを両親にお願いした右腕にとって、この日はいわば約束の日。こんなはずじゃなかった。

 心が折れかけたその時、ソフトバンクから育成ドラフト6巡目で指名され、安堵から両脚を放りだし、椅子にダラリと全体重を預けた木下。「ほっとしたというか。涙は、安心したから出ましたね」。今年のドラフト会議で名前を呼ばれた127人中、木下の名前が呼ばれたのは117番目だった。

 ドラフト会議を通して知った“現在地”に、「指名されたのはよかったですけど、本当に悔しい。この結果を受け止めて、この思いを忘れずに練習をしていきたいです」と新たに闘志を燃やした。そして、「全国の誰が見ても安心する、『木下瑛二やったらいける!』という風に言われる、球界を代表するピッチャーになりたいです」。運命の日に与えられた悔しさをガソリンに、プロでも、絶えない向上心を持ち続けていく。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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