「あいつ、かわいいですよ」 “親友”がドラ1指名、西武・山田陽翔が明かす絆…忘れられない青春の1ページ

西武・山田陽翔【写真:加治屋友輝】西武・山田陽翔【写真:加治屋友輝】

西武・山田陽翔とDeNAのドラ1指名・星野世那は近江高時代の同級生

 22日のドラフト会議でDeNAから1位指名された大商大の左腕・星野世那投手は、滋賀・近江高時代に西武・山田陽翔(はると)投手の控えだった。山田はかつてのチームメートのプロ入りをどう受け止めているのだろうか。

 本拠地ベルーナドームで秋季練習中の山田に聞くと、屈託のない笑顔を浮かべた。「僕、星野がプロになってくれるのが、マジでめちゃくちゃうれしいんです。高校時代も仲が良くて、毎日練習が終わった後、自転車でJR彦根駅まで十数分。そこから乗って帰る電車も一緒でした」。

 共に地元・滋賀県出身の2人だが、知り合ったのは近江高入学後。山田は2年生の夏の2021年、背番号「8」ながら事実上のエース、打撃でも3番もしくは4番を務めて甲子園出場を果たし、ベスト4入りの原動力となった。星野も背番号「10」でベンチ入りし、右翼の守備に就いた。

 新チームで主将を務めた山田は、2022年選抜大会で大車輪の働きを見せる。長崎日大高との1回戦で延長13回を投げ切ったのをはじめ、延長11回の激闘を制した浦和学院高(埼玉)との準決勝まで全4試合を完投。投球数は計609球に達した。大阪桐蔭高との決勝は、先発するも3回途中4失点で降板。リリーフした星野も満塁弾を含む3本塁打を浴び、5回1/3で14失点(自責点6)と打ち込まれ、1-18で敗れた。

甲子園で躍動した近江高時代の山田陽翔【写真提供:産経新聞社】甲子園で躍動した近江高時代の山田陽翔【写真提供:産経新聞社】

 近江は同年夏の甲子園でも4強入りし、3季連続全国ベスト4を達成。山田は打撃でも海星高(長崎)との3回戦で満塁本塁打を放った。星野も存在感を増し、5試合中4試合にリリーフで登板した。

「将来、先発で投げ合えたら最高です」

「星野は高校時代も“控え”という感じではなく、いいピッチャーでしたよ。練習をよくする選手で、冬場の先が見えない時にも手を抜くことはなかった。みんなが休憩したがるところでのひたむきさが凄いと思っていました」と山田は振り返る。

 そして、星野に関しては忘れられない光景があるという。

「帰りの電車の中で、あいつは頬杖をついて居眠りをして、手に持っている携帯電話が何度も滑り落ちるんです。かわいい……あいつ、かわいいですよ」と目を細める。彦根駅から約30分、山田が栗東駅で降りた後も、星野は電車内に残り、さらに長めの通学時間を過ごした。

 居眠りといえば……。「朝に自主練習をしようと、他のチームメートも含めて午前5時台の電車に乗るのですが、彦根を寝過ごして、終点の米原まで行ってしまうやつがたくさんいました。みんな練習はしたいのですが、眠いので」と懐かしそうに回想する。「僕自身は、1度も寝過ごしたことはありません」と言い切るあたりは、さすがキャプテンといったところだろうか。

DeNAからドラフト1位指名を受けた大商大・星野世那【写真:加治屋友輝】DeNAからドラフト1位指名を受けた大商大・星野世那【写真:加治屋友輝】

 こうして青春を一緒に過ごした親友が、同じプロの世界に入ってくる。「星野」、「はると」と呼び合っていた2人は、高校卒業後も年に1度くらい顔を合わせ、ドラフト会議直前にも滋賀で食事を共にしたという。「一緒に練習してきた仲間ですから、ここからまた一緒に頑張りたいです。同じチームでやりたい気持ちもありましたが、同じ関東のチームなので会えるんじゃないかなと……」と目を輝かせる。

 山田は2022年ドラフト5位で西武入りした後、中継ぎで活躍してきた。1軍での通算60試合は全てリリーフ登板だ。しかし「星野は先発でしょうね……。自分もいずれは先発したいです。そういう気持ちが(星野のプロ入りで)増したかもしれません」と刺激を受けている。

「将来、先発で投げ合えたら最高ですし、高校時代の同級生たちも喜ぶんじゃないですかね。どっちを応援したらいいか、わからなくなるかもしれませんが……」と笑みを浮かべた。

今季は右肘クリーニング手術で出遅れ…「来季へ向けて球速を上げたい」

 山田は3年目の昨季、1軍デビューから15試合連続無失点を記録するなど、49登板で3勝3敗17ホールド1セーブ、防御率2.08の好成績を残した。今季は3月に右肘のクリーニング手術を受けて出遅れ、1軍初昇格は7月22日までずれ込んだ。防御率は2.38と上々だったが、登板数は11試合にとどまった。

 大石達也投手コーチは「昨季に比べると、制球力がいまひとつでした。特に左打者の内角へのカットボールがコースに決まらないと、外角へのシュートやツーシームに踏み込まれ、とらえられやすくなりますから……」と語る。

秋季練習で汗を流している【写真:宮脇広久】秋季練習で汗を流している【写真:宮脇広久】

 山田自身は「来季へ向けて球速を上げたいです。自己最速は152キロですが、最近は150キロ台が全然出ていない」と力を込める。「自分の得意は変化球ですが、真っすぐが速くなれば、緩急を使えるようになって必然的に空振りが増えますし、空振りが一番リスクなくアウトを取れる方法ですから」と精力的にウエートトレーニング、投げ込みに取り組んでいる。

 31日からは宮崎・南郷での秋季キャンプに参加する。共に戦った親友がプロの世界へ足を踏み入れる中、“甲子園のヒーロー”もまた新たなステップを踏もうとしている。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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