巨人・桑田コーチに見える時代に合った指導法 名伯楽が称賛「安心感を与えている」

巨人・桑田真澄投手チーフコーチ(左)【写真:荒川祐史】
巨人・桑田真澄投手チーフコーチ(左)【写真:荒川祐史】

元巨人コーチの橋上秀樹氏「新戦力の活躍に貢献している」

 巨人は今季、ドラフト1位ルーキーの大勢投手がいきなり守護神の座に就き、交流戦終了時点で両リーグ最多の21セーブをマークしているのをはじめ、ドラフト3位の赤星、育成6位入団の菊地、大卒2年目の平内、21歳の戸田ら若手投手が続々台頭している。かつて楽天、巨人、西武、ヤクルトで名コーチとして鳴らし、現在はルートインBCリーグ・新潟の監督を務めながら評論家活動も行っている橋上秀樹氏は、桑田真澄投手チーフコーチの存在に着目している。

 世代交代期を迎えている巨人投手陣。「テレビ中継で見る限り、桑田コーチはベンチ内で若手と綿密に会話を交わしている。実績のない投手に、大丈夫、やれるぞ、と安心感を与えている空気が伝わってきます。新戦力の活躍に貢献しているのではないでしょうか」と橋上氏は指摘する。

 橋上氏自身も巨人で2012、13年に1軍戦略コーチ、2014年には1軍打撃コーチを務め、リーグ3連覇に貢献。相手投手の分析に才能を発揮した。特に当時4番を張っていた阿部慎之助(現1軍作戦兼ディフェンスチーフコーチ)からの信頼は厚かった。

 名伯楽として知られる橋上氏だが、最近は若い選手の気質の変化を痛感している。「昔は選手を突き放し、自分の力で這い上がって来い、という指導法が多かった。しかし、今どきの選手は“ナニクソ”とは思わず、コーチがどやしつけるとシュンとして這い上がってこられないことが多いです」と述懐。コーチと選手の関係は劇的に変わり、「昔は教わる側から近づいて距離を縮めましたが、今はコーチの方から選手に寄り添っていかなくてはいけない」と言う。

 橋上氏がヤクルト選手時代および楽天コーチ時代に薫陶を受けた名将、故・野村克也氏は「コーチは選手に対し一定の距離を取れ」と厳命していたそうだが、「今のご時世では、必ずしも当てはまるとは限らない。距離があってはダメで、コーチの方から近づいていかないと、いつまでたっても縮まらず、指導も何もあったものではない。コミュニケーションを取り、信頼関係を築いた上でないと、何を教えても浸透しません」と苦笑する。桑田コーチの立ち居振る舞いからは、今の時代に合った指導法を取っていることが伺えるという。

 桑田コーチは昨年、1軍投手チーフコーチ補佐として現場復帰し、今季から現職に。一方、巨人では阿部コーチが2020年から2年間2軍監督を務めた上で、今季から1軍ベンチ入りし、次期監督の有力候補とも見られている。橋上氏は「慎之助には昔ながらの体育会系の気質もある。これはあくまで私見ですが、阿部コーチにとってひとつの見本になることも、桑田コーチが1軍ベンチに入っている意義の1つではないでしょうか」と推察した。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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