「日本で積み上げたことが無になる」 安易なMLB挑戦に福留孝介氏が鳴らす警鐘
ただ「行きたい」だけで米球界へ行くと「損をすることになる」
日米あわせて24年のプロ生活のうち、5年を米国で過ごした福留孝介氏は、その時間を「いい経験になった」「行って良かった」と振り返る。福留氏がカブスに入団した2008年以降も数多くの日本選手が海を渡った。今オフもすでに吉田正尚外野手がレッドソックス、千賀滉大投手がメッツと契約を結び、2023年から米国を主戦場とする。
子どもたちが将来の夢に「メジャー選手」を掲げるようになった今、選択肢の1つとして米国でのプレーに興味を持つ選手は増えるだろう。では、実際に米国へ渡り、メジャーでもマイナーでもプレーした経験を持つ福留氏は、米国行きを希望する選手にどんなアドバイスを送るのだろうか。福留氏の米国期にスポットを当てた連載の最終回は「覚悟の話」だ。
「自分はFAになって、年齢的にも最後のチャンスだと思ったから『よし挑戦しよう』って行ったけど、だからって『僕、アメリカに行きたいんですよね』っていう選手全員に『おう、頑張ってこいよ』って簡単に言えるかといったら、う~ん……って思う」
少し困った表情を浮かべながら、言葉を繋いだ。
「中途半端な気持ちで行くと、損をすることになると思う。どうしたいのか、先のビジョンを持っていないと、何も得ずに嫌な思いだけして帰ってくることになると思う」
福留氏が移籍した2008年から15年が経ち、より多くの試合中継を楽しめたり、情報が時差なく手に入ったり、メジャーは一層身近な存在となってきた。だからこそ、メジャー選手を夢見る子どもたちが増えたのだが、実際には身近になりはしても、誰もが成功するような甘い世界ではない。
「本当にメジャーに行きたいのだったら、そこに行くまでに何をしなければいけないか、行ったら何をしたいのか、その後にどう繋げていきたいのか、ある程度明確なビジョンを持っていないと。ただ『行ってみたい』だけで行っても、せっかく日本で積み上げたことが無になる可能性は高い。行きたい気持ちは分かるけど、行って何をしたいのか、だよね」