試合前に荷造り…遭遇した“戦力外の瞬間” エ軍「兜担当」と交わした別れの握手
DFAになったフィリップス…「兜パフォーマンス」では被らせる役割
最後までナイスガイだった。大谷翔平の所属するエンゼルスは20日(日本時間21日)、ブレット・フィリップス外野手をメジャーでの試合出場の前提となる40人枠から外した。事実上の戦力外(DFA)と呼ばれる措置だ。試合前のクラブハウスで、選手がユニホーム姿に着替える中、私服で1人バットをケースに片づけていた。記者は最後にあいさつに行くと、向こうから手を差し伸べてきた。いつもと変わらない笑顔に、思わず目をそらしてしまった。
この日、頭痛と不眠症のため、調整が遅れていたジャレッド・ウォルシュ内野手が負傷者リスト(IL)から復帰。クラブハウスで記者に囲まれているすぐ横に、緑色のTシャツに短パン姿で荷造りをするフィリップスの姿があった。記者たちの邪魔にならないように、ロッカーの隅で荷物をまとめていた。誰にでも配慮を欠かさないフィリップスらしかった。
明るいキャラクターでチームのムードメーカーだった。昨季所属したレイズでは野手登板で打者・大谷と対戦。右翼フェンス直撃の二塁打を浴びたが「僕からホームランを打てなかった」「オレはアメリカのショウヘイ」とジョークを飛ばした“自称二刀流”だ。エンゼルス加入後は、本塁打が飛び出した際の“兜パフォーマンス”で被せる役割を自ら買って出た。
その一方で、記者が取材しての印象はとても真面目で、チームのことを第一に考えている男。試合前にはベンチで瞑想してから練習に臨むのが恒例だった。6日(同7日)の本拠地レンジャーズ戦では、今季“初登板”を果たしたが、投球はあまり好きではないという。それでも「ブルペンを助けることができるので、喜んで役割を引き受けた」。今年1月、ペリー・ミナシアンGMが「この集団(エンゼルス)は、自分のことよりもチームのためにという気持ちを持っている。勝つためならどんなことでもする」と話していたが、まさにその言葉を体現していた。