T-岡田に「もっと打てよ!」 盟友・坂口智隆氏が復活信じる能力「誰も真似できない」

オリックス・T-岡田(右)とOBの坂口智隆氏【写真:荒川祐史、中戸川知世】
オリックス・T-岡田(右)とOBの坂口智隆氏【写真:荒川祐史、中戸川知世】

オリックスOBの坂口智隆氏がT-岡田にエール「もっと打てよ!」

 リーグ3連覇、2年連続日本一を狙うオリックスは前半戦首位ターンを決めた。12球団No.1の強力投手陣に頓宮裕真、茶野篤政、森友哉ら“新戦力”が機能している。2005年から2015年まで在籍していた球団OBの坂口智隆氏は「吉田正尚選手の穴を全員で埋めている。けど『もっと打てよ!』って選手はいる」と、注目している選手を挙げ、ゲキを飛ばしている。

 前半戦最後のカードではライバルのソフトバンクを相手に3連勝。しかも、敵地での同一カード3連勝は10年ぶり。激戦を繰り広げたこの3試合をベンチで見つめていたのが、かつての本塁打王であるT-岡田外野手だ。2010年に32本塁打でタイトルを手にした35歳は今季、怪我もあり出遅れ。ここまで6試合に出場し打率.200、0本塁打3打点と目立った活躍はない。

 オリックス時代に共に外野を守った坂口氏は「プロの世界は結果が全て。毎年、たくさんのライバルが入ってきてポジション争い。そうなることでチームが変わっていく。ここまでやってるだけでも凄いんだけど、まだ物足りない。もっとできるポテンシャルはある」と、“戦友”の動向を気にかけている。

 T-岡田が入団した時から良き兄貴分として寝食を共にした。まだ2軍でくすぶっていた当時、2人は練習では競うように日が暮れるまでバットを振り、ヘトヘトになりながらも夜は何度も食事に出かけた。「すごい奴が入ってきた。タイプは違うが、一緒に1軍でプレーしたいと思わせる選手」。技術、メンタルなど惜しみなくアドバイスを送り続け、2010年からはともに外野の一角を担った。

ベンチを温める日が続いているが「試合に出てない時でも気持ちは常に若い時と同じ」

 2015年にオリックスを退団した時には本拠地最終戦で、T-岡田が坂口氏のタオルをファンが待つライトスタンドに掲げる印象的なシーンもあった。昨年、引退した際にも「まだできるんちゃうの?」と“タメ口”で連絡を受けたという。そんな可愛い後輩だからこそ、常勝軍団の仲間入りを果たしたチームでもう一度、活躍する姿を願っている。

「本人は色々、考えることはあるだろうけど本塁打を狙ったらいいと思う。ベテランと言われる年齢に入っても誰もが真似できない長打力がアイツにはある。俺は38歳で引退したけど、超えてもらわないと困る。もっとできる、もっとホームラン打てる、もっと試合に出られる。ポテンシャルの半分も出してない」

 豪快なアーチを望む先輩からの言葉にT-岡田は苦笑いを浮かべながらも、はっきりとした口調でこう答えた。

「本塁打の意識はプロに入ってからも変わらない。自分のスイングをして良い角度がつけばスタンドに放り込む自信はあります。年齢を重ねてもそこは一緒。若い子が入ってきて、ベテランになってもやるべきことは同じだと思う。声を出して引っ張るようなタイプじゃないので、結果を残してチームの先頭に立たないと。試合に出てない時でも気持ちは常に若い時と同じです」

オリックス・T-岡田(写真は2021年)【写真:荒川祐史】
オリックス・T-岡田(写真は2021年)【写真:荒川祐史】

先輩からのゲキに「そろそろ、応援しに来い」

 現在は解説者として活躍する傍ら、YouTubeなどSNSでも積極的に自らを発信している坂口氏。あまり表舞台が得意でなかった現役時代と真逆の姿に、T-岡田も「なんか、引退してから楽しくやってるみたいですね。でも、『そろそろ、応援しに来い』って伝えてください」と、当時と同じく“口撃”は忘れていない。

 昨年で複数年契約を終えオフには年俸9500万円から減額制限(年俸1億円以下は25%)ギリギリとなる2300万円減の7200万円で更改。今年2月で35歳を迎え、崖っぷちといってもおかしくはない。それでも毎年のようにT-岡田には何故か期待してしまう。

「だって名前、T-岡田やで。ずっと、そんな選手どこの球団にもおらん」

 師弟関係が続く坂口氏の期待に応えることはできるのか。後半戦は背番号「55」の逆襲を見てみたいものだ。

○著者プロフィール
橋本健吾(はしもと・けんご)
1984年6月、兵庫県生まれ。報徳学園時代は「2番・左翼」として2002年は選抜優勝を経験。立命大では準硬式野球部に入り主将、4年時には日本代表に選出される。製薬会社を経て報知新聞社に入社しアマ野球、オリックス、阪神を担当。2018年からFull-Countに所属。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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