残塁祭り、終盤大ピンチの“負け試合”も「俺は楽やった」 阪神・岡田監督の余裕

阪神・岡田彰布監督【写真:荒川祐史】
阪神・岡田彰布監督【写真:荒川祐史】

同点の8回に代打・糸原が右中間へ適時二塁打を放ち勝負あり

■阪神 2ー1 ヤクルト(11日・京セラドーム)

 苦しいゲーム展開も勝ち切る力が、今の猛虎にはある。阪神は11日に行われたヤクルト戦(京セラドーム)を2-1で勝利し、両リーグ最速の60勝に到達。夏のロードで怒涛の8連勝をマークし2位・広島とのゲーム差を「6」に広げた。代打、若手の継投――。岡田彰布監督の采配も冴え渡り“アレ”に向け独走態勢に入った。

 初回は2死二塁から4番・大山の右前適時打で先制したが、5回終了時点で「11」の残塁を築くなど、拙攻が続いた。先発の村上は同点の7回1死満塁から代打・川端を三ゴロ併殺に仕留め7回1失点の好投。本塁が遠い展開で岡田監督が動いたのは8回だった。

 この回から左腕・島本を投入。先頭の代打・濱田に中前打を許して2死二塁となったところで、昇格したばかりの岡留を投入するも、山田に四球を与える。続く村上に対し左腕・及川をつぎ込むも、またしても四球を与えて満塁のピンチを作ると、このイニング4人目となる馬場がマウンドへ。サンタナを中飛に仕留め、なんとか無失点でしのいだ。

 怒涛の継投策に指揮官は「いやいや、予定通りですよ。アメリカに帰ったり、連投しすぎたりでベンチに入ってないから」と口にした。ケラーが帰国のため登録抹消、加治屋の疲労を考慮するなど、苦しいブルペン事情のなかでも選手を試す余裕を見せた。

「みんな四球はオッケーで。最後の馬場以外は。満塁までオッケーだから。岡留、及川は四球オッケーで行けって言ったから。ほんなら、本当に四球やったけどな。2ストライク追い込んだけどな。そこでもう1球、良い球を放れるようになったら、1軍にもっと定着すると思うけど」

決勝点を生んだ代打策「糸原は打つ奴やから」

 チームは決して万全ではない。守護神・湯浅が左脇腹の負傷で復帰のメドが立たず、先発ローテでも勝ち頭だった左腕・大竹が体調不良で7月下旬に登録抹消(来週に復帰する可能性)。そんな中でも百戦錬磨の指揮官は選手の状態を見極めながら、適材適所に当てはめ試合を進めていく。

 この試合で決勝点が生まれたのも勝負に出た代打策だった。8回1死一塁の場面で代打・糸原が右中間を破る適時二塁打を放った。得点圏に走者を進める犠打の選択肢もあったが「いやもう、最初からバントなんかないから」と指揮官。

「一生懸命、サイン見てたけど、サインなんかない。バントさすんやったら、バントする奴を行かすって。糸原は打つ奴やから」

 前日の巨人戦(東京ドーム)では糸原の代打の代打・原口が9回に試合を決定付ける2ラン。岡田監督が信頼を置く左右の“切り札”がきっちりと仕事を果たしている。高校野球に本拠地・甲子園を譲る“死のロード”は今や過去の話。鬼門だった敵地・DeNA戦で同一カード3連勝を果たすなど8月は9勝1敗の勝率9割と猛虎の勢いは止まらない。

「とにかく、ずっと接戦でいっても最後は何とか勝ち切るというかね。(9回1死二塁の場面も)そんな1点守る必要ないと、同点でもいいやんか。だからそういう気持ちでやってたから。俺は楽やったですけど」

 2008年には巨人に13ゲーム差をひっくり返され歴史的なV逸を経験するなど、後半戦で大失速する姿を虎党は何度も見てきた。だが、今年は違う。勢いだけでなく、確かな勝負勘で勝利を重ねる岡田阪神の強さは本物だ。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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