セCSが実証した「短期決戦の鉄則」 専門家が指摘…広島痛恨だった2つの拙守

広島・新井貴浩監督【写真:荒川祐史】
広島・新井貴浩監督【写真:荒川祐史】

第1戦では韮澤が併殺コースのゴロ後逸、第2戦では末包が適時失策

 阪神が無傷で日本シリーズ進出を決めた、セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ。現役時代に中日、巨人、西武で捕手として活躍し、日本シリーズには5度出場、中日時代の1982年にはシリーズ優秀選手賞を獲得した野球評論家・中尾孝義氏は、「短期決戦の鉄則通り、守りが明暗を分けた」と総括した。

 18日の第1戦で広島は、高卒4年目・22歳の韮澤雄也内野手をレギュラーシーズンの6月11日・ロッテ戦(ZOZOマリン)以来となるスタメン(8番・一塁)に抜擢。しかし、1-1の同点で迎えた5回の守備で、1死一、三塁のピンチに9番打者の村上頌樹投手が放った一塁線の痛烈なゴロに股間を抜かれ、勝ち越しを許した(記録は適時二塁打)。韮澤の今季1軍出場は45試合。中尾氏は「記録は二塁打ですが、キャリアのある一塁手であれば捕ってしかるべきで、併殺を狙える打球だった。試合の流れを相手に渡した痛いプレーと言わざるを得ないでしょう」と指摘する。

 韮澤は打撃でも、阪神先発の村上頌樹投手の前に2打席凡退し、7回の打席で代打を送られベンチに退いた。「韮澤は昨年、ウエスタン・リーグで村上と相性がよかったそうですが、1軍登板なしに終わった昨年の村上と、急成長してリーグトップの防御率(1.75)をマークした今季の村上とでは全く違う。そこに広島サイドの誤算があったのではないでしょうか」と続けた。

 翌19日の第2戦でも、広島は1-0とリードして迎えた2回、1死一塁の場面でシェルドン・ノイジー外野手の右前打を2年目の右翼手・末包昇大外野手が後逸。タイムリーエラーとなって同点に追いつかれた。最終的に1-2の9回サヨナラ負けを喫しただけに、手痛いミスだった。

阪神・木浪聖也【写真:小林靖】
阪神・木浪聖也【写真:小林靖】

元スカウトが見た木浪の成長「社会人を経由したことは正解だった」

 実は、勝った阪神サイドにも、守備のミスはあった。第2戦の初回、先頭の菊池涼介内野手にレフト線を破る二塁打を浴び、続く野間峻祥外野手が初球を送りバントすると、本塁後方やや三塁側への小飛球となったが、坂本誠志郎捕手はミットに当てながらボールを落としファウル。中尾氏は「ミットに当たっている以上、捕らないといけません。結局あの後、強攻に切り替えた野間に進塁打とされ、小園(海斗内野手)に左前適時打を浴びて先制を許した。先発の伊藤(将司投手)が追加点を許さなかったからよかったのですが、ああいうプレーで流れが変わるケースがあるので注意が必要です」と語った。

「短期決戦のような大事な試合になるほど、そして両チームの力が拮抗するほど、守備が勝敗を分ける可能性が高くなります。それはプロのレベルから、最近私が指導にあたっている小学生に至るまで、同じだと思っています」と中尾氏は改めて強調した。

 一方、第2戦で9回サヨナラ打を放った阪神・木浪聖也内野手の活躍は、中尾氏にとって感慨深い。阪神の関東地区担当スカウトを務めていた2016年頃、亜大時代の木浪に注目していた。「当時から内野ならどこでも守れるユーティリティプレーヤーでした。もしプロ志望届を提出していれば、ドラフト5~6位で指名される可能性はあったと思います」と回想する。

 結局、木浪は社会人のHondaを経て、2018年ドラフト3位で阪神入り。中尾氏は「今の木浪は常にバットのヘッドが立って出てくるので、高めの球にも対応できる。ヘッドが下がると、バットの軌道がボールの下を通過することになるのです」と指摘した上で、「大学時代に比べると、パワーがつき、コンパクトながら力強いスイングを身につけました。社会人を経由したことは正解だったかもしれませんね」と評した。それぞれの選手の野球人生が交錯しながら、一瞬の油断もできない短期決戦が続く。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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