大注目で異様な雰囲気…巨人ドラ1の宿命 「無茶するから」阿部新監督が見せた“気遣い”

春季キャンプに臨んだ巨人・西舘勇陽【写真:矢口亨】
春季キャンプに臨んだ巨人・西舘勇陽【写真:矢口亨】

阿部監督、ドラ1右腕・西舘のブルペンをほぼ見ず「5球くらい見て逃げた」

 巨人のドラフト1位・西舘勇陽投手(中大)は宮崎での春季キャンプ初日の1日、いきなりブルペンで捕手を座らせ、変化球を交えて26球のピッチングを行った。中大の大先輩で、自身も23年前には巨人のドラ1ルーキーだった阿部慎之助新監督が“ならでは”の気遣いを見せた。

 独特の常時クイックモーション、最速155キロに達するストレートに少しでも早く目を慣らしたいという思いの表れだったのだろうか。この日、西舘の投球を岸田行倫、大城卓三、山瀬慎之助の3捕手が代わる代わる受けた。

 このうち西舘と“同学年”の山瀬は「今日はカットボールが良かった。自主トレ中にジャイアンツ球場で受けた時は、僕が防具をつけていなかったので、彼が遠慮したようでしたが、今日は腕を振って、本気で来てくれました。左打者に食い込むような、強いカットボールでした」と絶賛した。

 対照的だったのが、阿部監督の立ち居振る舞いだ。キャッチボール中こそ西舘にひとことふたこと声をかけたものの、ピッチングが始まると間もなく背を向け、ブルペンを離れてしまった。

 阿部監督は「あんな異様な雰囲気で投げるのは初めてだろうから、『飛ばしすぎないように』、それに『宮崎って思ったより寒いから、(16日からの第2次キャンプで)沖縄に入ってからスイッチを入れる感じでやれば?』と言いました」と明かし、ピッチングをほとんど見なかったことについては、「(西舘が)ちょっとかわいそうだから、5球くらい見て逃げた。異様な雰囲気の上、俺が後ろに仁王立ちしていたら、無茶するだろうから」と説明した。

 それでも「あの“スーパークイック”はかっこいいね」と評した。ドラ1ルーキーが未体験の雰囲気の中で飛ばし過ぎ、故障につながることがないように、指揮官として細心の注意を払ったのだ。一方、リリーフも取り沙汰されていた西舘の起用法について、「先発でいくよ」と明言。「大きく、大谷(翔平投手)くんみたいになってほしい」と付け加えた。

「あまり力を入れず、バランスを重視して投げました。プロのキャンプにはOBの方々などがいますが、自分のやることに集中していきたいです」と冷静に語った西舘。プロ人生のスタートを切った大器は、まずはマイペースで走り始めた。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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