監督から「チームを変えてほしい」 暗黒時代のドラ1…山岡泰輔が10年前に託された“改革”

オリックス・山岡泰輔【写真:北野正樹】
オリックス・山岡泰輔【写真:北野正樹】

リーグ3連覇を果たしたオリックスの春季キャンプは“満員御礼”

 チームの変化を改めて実感した1か月だった。「本当に、いいチームになったと思います」。オリックスの山岡泰輔投手は、10年目の宮崎キャンプを終え、そう振り返った。

 3連休中の日曜日だった2月11日に球団新記録の2万9196人が来場するなど、連日、多くのファンでにぎわった今年のキャンプ地。コロナ禍が明け、リーグ3連覇を果たし常勝軍団に変貌を遂げつつあるチームとの相乗効果で、ファンの数は一気に増えた。

「やっぱり、お客さんが満員になってくれるのが1番ですね。見てもらってナンボの世界なんで。それが1番じゃないですか」。東京ガスからドラフト1位で入団したが、1年目からチームは2度の最下位を含め4年連続してBクラスに甘んじてきた。勝てない苦しい時代を知るだけに、言葉にも実感がこもる。

 チームを変える使命を託された。ドラフト指名挨拶で、当時の福良淳一監督(現GM)から「チームを変えてほしい」とスカウトを通じて伝え聞いた。172センチの身体を全身、バネのようにしならせる小気味よい投球と、意気に感じて投げ込むプレースタイルの山岡に、投手陣やチームに刺激を与えてもらい、活性化につなげる狙いがあったのだろう。

 1年目から先発ローテーション入りし、8勝(11敗)、2年目に7勝(12敗)を挙げた。先輩の金子千尋投手、西勇輝投手がチームを去った3年目には開幕投手を任され、13勝4敗(勝率.765)で勝率第1位のタイトルに輝いた。バランスよくパルクールをこなしたり、ボックスジャンプに軽々と飛び乗ったりするなど身体能力も高く、若手選手へのアドバイスも惜しみなく行う。

2023年にブレークした東晃平に夏場のスタミナ不足対策をアドバイス

 2023年シーズンに6勝無敗とブレークした東晃平投手は、育成選手時代に夏場のスタミナ不足対策を山岡に聞き、練習方法を変えてシーズンを乗り切り、翌年の支配下選手に結び付けるなど、若手から兄のように慕われている。

「いやいや、僕のあれじゃないですよ」と否定するが、いい意味で厳しい上下関係をなくすなどして、年下の選手が遠慮することなく力を発揮できるような環境が整ったことの一助になったのは間違いない。

 考え方もシンプルでバランスがいい。キャンプでは机とイスを用意してもらい、1時間以上にも渡るサイン会を何度も行った。「この日しか来ることができない方もいるでしょうし、差し入れを持って来てくださっている方も、渡せないと意味がない。時間が空いている時にしかしませんから、僕は何とも思っていません。サインをする人が偉いわけでも、書かない人が偉いわけでもありません」と、考えを押し付ける気持ちは全くない。

 昨季は、先発から中継ぎに転向し、クローザーも務めた。先発で培った打者との駆け引きや勝負勘など、経験豊富な山岡だからこそこなせたポジションでもあった。

 今オフは例年、広島で行ってきた自主トレ期間を短くし沖縄で約2週間、汗を流した。「早く仕上げようと思ったのではありませんが、暖かくて結構早く作れました」と順調に調整が進んできたことを明かす。計約300イニングを投げた山本由伸投手、山崎福也投手が抜け、先発ローテーション入りに期待がかかる今シーズン。「みんなで埋めていけばいいんじゃないですか」。兄貴分として投手陣を引っ張るつもりだ。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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