視力急低下…ファーム監督ゆえの“苦悩” 「今の方が精神的には弱い選手が多い」

西武・西口文也ファーム2軍監督【写真:宮脇広久】
西武・西口文也ファーム2軍監督【写真:宮脇広久】

「僕の現役時代はなかなか優しい言葉をかけてもらえなかった」

 現役時代から西武ひと筋。投手として通算182勝を挙げ、2017年から20年までコーチ、21年からファーム監督に就いている西口文也氏。編成担当も含めると西武29年目となる。9月に52歳となるが、若手を預かる立場として、“今どきの選手”とのコミュニケーション術をFull-Countのインタビューで語った。

「選手とはざっくばらんに話しています。(2軍の)風通しはいいと思いますよ。僕はそんなに怖くないので。こちらが話を振れば、気軽に答えてくれますよ」

 しかしながら1972年生まれの西口ファーム監督が歩んできた時代と、現在の若い選手たちを取り巻く環境は大きく異なる。「昔と今とを比べると、今の方が精神的には弱い選手が多い印象を受けます。その辺は気を遣いながらやっているつもりです。コーチも試行錯誤していると思います」と認める。

「僕の現役時代は指導者や先輩から、なかなか優しい言葉はかけてもらえず、怒られてばかりでした。今はそういう時代ではない。もちろん、叱らなければいけないところでは、しっかり話をしますが、それ以外のところでは、どちらかと言うと和やかにしゃべりながら、選手の話を聞くようにしています」と意識している。「とにかく、一方通行だけはダメだと思う。そこは特に気をつけています」と強調する。

 現役時代からひょうひょうとしたキャラクターで、穏やかな雰囲気を醸しだす。チームにはいわゆる“ゆとり世代”の選手たちもいる。今の時代に合った指導者と言えそうだ。「野球の話でも、雑談でもいい。気軽に話をすることが大事かなと思って、心掛けています」とうなずいた。

視力低下は「全選手をタブレットでチェックするようになったから(笑)

 西武は昨年から3軍制を敷いているが、「3軍監督」のポストはない。3軍も含めて統括している西口ファーム監督は現職に就いてから、現役時代に1.5あった視力は0.8にまで落ちたという。「1軍コーチ時代は基本的に、目の前の選手だけを見ていればよかったのですが、ファームの監督になってから、1軍と3軍を含めて全選手のデータをタブレットでチェックするようになったからですよ、きっと」と苦笑する。

「2軍が試合をやっている時に、3軍の選手が室内で練習していることもありますし、2軍と3軍が両方試合をやっている時もある。3軍の選手を生で見る機会がどうしても減ってしまう」のが悩みの1つだ。埼玉県本庄市でデーゲームの2軍戦が早めに終了した際に、そのまま車で1時間半かけて、栃木県小山市でのナイターの3軍戦を視察したこともある。

「若手の成長を見ているのは、楽しいですよ」とファームの指導者としてのやりがいを語る。「1軍の試合の勝敗以上に、2軍から昇格していった投手が抑えたか、野手は打ったかが気になるようになりました」と“親心”をのぞかせる。

 チームにとって勝負と育成の両立は永遠のテーマだ。西口ファーム監督は「2軍にとっては、もちろん育成が大前提ですが、その中でも優勝を目指しています。勝負の世界は勝たなきゃ面白くない。昨年の優勝争いの最中は、選手の目の色が違いました」と振り返った。

 昨年はイースタン・リーグで熾烈な優勝争いを演じながら、最終的に優勝した巨人に4ゲーム差の3位に終わった記憶は、悔しさとともに脳裏に刻まれている。2軍であっても勝負にこだわることは、かつて常勝を誇ったライオンズのDNAを守ることにもつながる。

「みんなが同じではないですから、選手1人1人の個性を生かしていきたいと思います」と強調する西口ファーム監督。世代を越え、生身の人間として若い選手に寄り添う。

(倉林知子 / Tomoko Kurabayashi)

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