同期入団で歩んだ10年 引退決断の小田裕也が贈る、西野真弘への“返事”

オリックス・小田裕也(左)と西野真弘【写真:北野正樹】
オリックス・小田裕也(左)と西野真弘【写真:北野正樹】

現役引退のオリックス・小田裕也、西野真弘へ「先に辞めて、ごめん」

 照れくさい言葉を、真っすぐに伝える。今季限りでの現役引退を表明したオリックス・小田裕也外野手が“パートナー”へ愛情のこもったメッセージを送った。「申し訳ない。先に辞めて。本当にごめんと思っています」。2人は2014年ドラフトの同期入団。ともに歩んだ10年を、しみじみと振り返った。

「共通点がすごくあったと思います。社会人から入った野手2人。お互い(7位と8位の)下位指名だし、身長も高くない。わざわざ『一緒に頑張ろう』と言ったことはないけど、2人ともその認識だったと思っています」

 新人年だった2015年。小田が31試合に出場して打率.326を記録すると、西野は57試合で打率.304をマークした。プロ2年目の2016年に、西野が全143試合に出場すると「自分も負けていられないと思った」と小田のハートをさらに熱く燃やした。

「西野の活躍を見て、自分もプロの世界で通用すると信じ込むことができました。西野の存在が、いつも目に飛び込んできた。刺激しかなかったし、助けられた部分が大きいです」

進化を求めた10年間「自分の生きる道を探しながら、葛藤とも戦いながら」

 年齢は小田が1つ上。ただ、西野が「同期でもあり、先輩でもあり、生意気を言えば……友達です」と表現するように、小田も同じ気持ちだった。「1つだけ歳が違って、後輩ではあるんですけど。僕は元々そう見ていない。友達。同級生みたいなもんだから……。ベタベタしないけど。でも、すごく大切な存在に変わりはない」。浅く被った帽子のツバに手を当て、深く被り直した。

「先に辞めて、ごめん。逆の立場だったら苦しいと思う」

 引退を決断。心境に変化があった。「『負けたくない』の気持ちが『頑張れ』になったんです。去年、そして今年。西野に『まだまだやれる姿』を見せつけられた。シンプルにすごいと思った。だから、僕は決断できたのかもしれない。『あ、大丈夫だ』って。(西野の存在は)自分のことみたいだった。活躍に安心させてもらったから決められたのかもしれないんです」。優しい眼差しで、背番号5を探した。

 一呼吸を置いて、現役生活を振り返る。「10年。よくやれたのかな。即戦力で働かないと……の年齢(24歳)で入団して。自分の生きる道を探しながら、葛藤とも戦いながら……。だから、10年の積み重ねになったのかなと思っています」。

○真柴健(ましば・けん)1994年8月、大阪府生まれ。京都産業大学卒業後の2017年に日刊スポーツ新聞社へ入社。3年間の阪神担当を経て、2020年からオリックス担当。オリックス勝利の瞬間に「おりほーツイート」するのが、ちまたで話題に。担当3年間で最下位、リーグ優勝、悲願の日本一を見届け、新聞記者を卒業。2023年からFull-Count編集部へ。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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