T-岡田の“復活”へ「僕ができること」 寄り添った鈴木昂平コーチが願う「大きな放物線」

オリックス・鈴木昂平育成担当コーチ【写真:北野正樹】
オリックス・鈴木昂平育成担当コーチ【写真:北野正樹】

T-岡田の引退に鈴木昂平育成コーチ「大きな放物線を描いて」

 復活を願う思いが、体を突き動かす。今季限りでの現役引退を決めたオリックス・T-岡田外野手を打撃投手として支えた鈴木昂平育成担当コーチが、引退試合での豪打を願っている。
 
 大阪・舞洲の球団施設を活動の拠点にすることの多かった今季のT-岡田。スタメンを外れた試合や遠征に同行せず残留した時には、室内練習場でひたすら打ち込んだ。打撃投手を務めたのが鈴木コーチと飯田大祐育成コーチの2人だった。T-岡田は「2人には甘えさせていただきました。打ち込みたい時にはマシンを相手にしますが、やはり、生きた球が一番ですからね。2人ともすごく打ちやすいボールを投げてくれるんですよ」と頭を下げた。

 育成コーチは、支配下登録を目指す育成選手を指導するのが主な仕事。本塁打王のタイトルに輝いたこともあるベテラン選手は指導の対象ではない。それでも、空いている時間を使って練習に付き合ってくれたのだった。

 鈴木コーチは「2軍にいるということは(1軍に上がるための)調整しているわけです。自分の調子を上げるために、結果を出すために、苦しんでいるんですよね。1軍で一緒にプレーもしてきましたし、1軍で活躍してほしいと思っていました。僕ができるのは投げることなんで『投げてくれ』って言われたら、いつでも投げるつもりでいました」と“先輩”を思いやる。

 鈴木コーチには、若手選手のお手本になるT-岡田に「復活してほしい」という思いも強かった。2軍で調整していたT-岡田が球団施設に来るのは、午前7時半ごろなのだ。「準備が早いですね。やはり19年間、プロの世界でやってきて感じていることがあるのではないでしょうか。結果が出なくても常に前向きです。そういう姿勢は周りの若い選手にも伝わったと思います」。

 28歳で現役引退した鈴木コーチとT-岡田は、4年間一緒にプレーした。T-岡田は「守備固めで試合に出ることが多く、本当に縁の下の力持ちじゃないですけど、そういう選手たちがいてくれるからこそチームとして成り立っているんで、すごく大事な欠かせない存在ですね」と、鈴木コーチに今も感謝の気持ちを忘れないでいる。

 選手からコーチの立場に変わっても、お互いをリスペクトするからこそ、酷暑の舞洲で同じ汗を流せたのだろう。引退試合は本拠地最終戦となる9月24日の西武戦(京セラドーム)。勇姿を球場で見届けるという鈴木コーチは「最後は、大きな放物線を描いてほしいですね」。有終の一撃を願っている。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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