イチロー氏「初めて怖いと思った」 マウンドで女子選手に感じた“想定外”

高校野球女子選抜を相手に登板したイチロー氏【写真:矢口亨】
高校野球女子選抜を相手に登板したイチロー氏【写真:矢口亨】

4年目の対戦で初の3失点「怖いなと思ったのは今日が初めて」

 イチローをいつか倒す日が来るのか――。23日、東京ドームで「イチロー選抜 KOBE CHIBEN」が高校野球女子選抜を17-3で破り、4年連続での勝利を収めた。結果的には大差となったものの、「1番・投手」で完投したイチロー氏は「怖いと思った」と選手たちのレベルの高さに驚いていた。

 イチロー氏は初回、1死から井戸穂花外野手(東海大静岡翔洋)に左翼・松坂大輔氏の頭を越える二塁打を浴びると、中継が乱れて無死三塁のピンチを招いた。続く山下来々杏外野手(履正社)は中前にポトリと落ちる適時打で先制を許すと、イチロー氏は頭を抱えていた。

 続く西本夢生内野手(履正社)も中前打でつなぎ、原田京佳内野手(広陵)にも左中間を破る2点三塁打浴びて3失点。4回目の対戦で、初めて先取点を許した。しかし、2回以降は無失点。計10安打を浴びながらも10三振を奪い、4年連続で最後までマウンドに立ち続けた。

 試合を振り返ったイチロー氏は「(相手が)合宿してきたとは聞いていた。対策しているとはいえ、あんなに芯をくわれるとは全く想定していなかった。終わらないんじゃないかという不安に襲われました。すごく怖くなりました。今まで上手いなと思ったことはありますけど、怖いなと思ったのは今日が初めてです。驚きました」と目を丸くした。

「右バッターが内のスライダーを見切ったようなファウルをする。履正社の子とかね。男子でもなかなかあの技術ってない。あれは恐怖でしたね。ファウルで逃げる技術は僕が得意で、相手にとって嫌なバッターってファウルを打てるバッターなんですよね。それをしていた」

 またイチロー氏は女子高生の敬意にも感服。「野球への敬意を感じる試合だった。これだけ相手へ敬意が詰まった野球を僕は知らない。僕はもう自分の体が元気でいる限り、女子野球を応援したいと心から思った」とコメント。相手のいいプレーには拍手を送るといった選手の行動に心を打たれたという。

 イチロー選抜と女子選抜の年1回の試合が組まれてから4年目になった。イチロー氏は「小学生の子があの試合に出るために頑張ります。そういうと俺がいくつまでやらなきゃいけないっていうことになるんだけど(笑)。小さなきっかけを作りたい」と思いを語る。この試合の存在が、女子野球のレベルを引き上げる一因になっていることは間違いない。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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