現役引退決断…T-岡田が歴史に残した3本の3ラン ファンの記憶に刻んだアーチの数々

オリックス・T-岡田【画像:パーソル パ・リーグTV】
オリックス・T-岡田【画像:パーソル パ・リーグTV】

今季限りで引退…通算204本塁打の大砲が現役生活に幕

 オリックスは24日の西武とのホーム最終戦でT-岡田外野手と安達了一内野手の引退セレモニーを行う。2005年にオリックスに入団して以来、チーム一筋19年。2010年には本塁打王を獲得するなど、和製大砲として低迷期から黄金期に至るまでバファローズを支え続けた。今回は、T-岡田がプロの舞台で残した球歴に加えて、キャリアの中でも特に印象に残る3本の3ランを紹介する。

 T-岡田は履正社高から、2005年の高校生ドラフト1巡目でオリックスに入団。入団から4年間はレギュラー定着を果たせなかったが、登録名を本名から「T-岡田」に変更したプロ5年目に大ブレーク。打率.284、33本塁打、96打点、OPS.933という見事な成績を残し、22歳の若さで本塁打王のタイトルを獲得した。

 その後の3年間は本塁打20本未満とやや苦しんだが、2014年に24本塁打、2016年に20本塁打、2017年には自身2度目の30本塁打超えとなる31本塁打を記録するなど、和製大砲としてチームの中軸を担い続けた。30歳を超えてからも強打者として活躍を続け、2021年には115試合で17本塁打と随所で持ち前のパワーを発揮し、主力の一人として25年ぶりのリーグ優勝にも大きく貢献した。

 2022年以降は2年続けて打率1割台と深刻な不振に陥り、出場機会も激減。復活をかけて臨んだ今季も、3試合の出場で無安打に終わった。広い京セラドームを本拠地としながら通算204本塁打、715打点を記録し、長きにわたってチームを支えた生え抜きの強打者が、惜しまれながらバットを置く決断を下した。

T-岡田がインパクトを残した3本の3ラン

 ここからは、T-岡田が放った本塁打の中でも、とりわけ大きなインパクトを残した3本の3ランについて紹介する。

○2010年6月2日・中日戦

 7点を追う8回に打線が奮起し、中日投手陣を攻め立て、一挙に7点を奪い同点に追いついた。延長11回の1死一、二塁でT-岡田は低めを巧みにすくい上げると、高い弾道を描いた打球はそのままスタンドに飛び込んだ。4番としての期待に応える鮮やかな一打で、4時間49分にわたる大熱戦に最高のかたちで終止符を打った。

 本塁打王に輝いた2010年シーズンに飛び出した、天性の素質を感じさせる見事な一打。キャリアの初期から高い打撃技術を有していたことを示すこのホームランは、この活躍を一過性のもので終えることなく、長きにわたってプロの舞台でプレーを続ける未来を予見させるものでもあった。

○2014年10月12日・CS1stステージ第2戦・日本ハム戦

 シーズン最終盤までもつれた熾烈な優勝争いに惜しくも敗れたオリックスは、クライマックスシリーズで3位の日本ハムを迎え撃った。初戦を落として後がない状況で迎えた第2戦、オリックスは8回を迎えた1点ビハインド。このまま試合に敗れると、その時点でシーズン終了という土俵際まで追い詰められた。

 2死一、二塁とチャンスを作り、この試合で4番を任されたT-岡田が打席に立った。1ストライク3ボールから谷元圭介投手のボールを完璧に捉え、右翼席へ打った瞬間それとわかる起死回生の逆転3ランを叩き込んだ。豪快かつ美しいチームを救うアーチ。まさに劇的と形容するほかない一発は、キャリアにおける最大のハイライトの一つとなった。

優勝手繰り寄せたロッテ戦での劇的3ラン…直接対決で見せた意地の一発

○2021年9月30日・ロッテ戦

 首位のロッテを追う2位のオリックスにとって、逆転優勝のためには敵地での直接対決でのスイープが必須に近い状況だった。2連勝で同一カード3連勝を賭けて最終戦に臨んだが、8回に2点をリードされて迎えた9回。2死一、三塁で打席に入ったT-岡田はロッテの守護神・益田直也投手の投球を捉えた。

 あと1死で敗戦という状況から試合をひっくり返す、まさに値千金の逆転3ランとなった。劇的な一発によってチームは同一カード3連勝を飾り、その勢いのまま25年ぶりのリーグ優勝を果たす。優勝へのターニングポイントとなった3連戦で合計7打点と圧倒的な成績を残し、2014年に果たせなかった悲願のリーグ優勝を大きく手繰り寄せた。

 若くして大ブレークを果たした2010年、優勝まであと一歩に迫りながら涙をのんだ2014年、そして自らの一打によってチームを優勝に導いた2021年。勝負の世界で酸いも甘いも噛み分けてきたT-岡田が歩んだ球歴は、まさに美しいドラマと形容できるものでもあった。低迷期を主力選手として懸命に支え、美しいアーチを幾度となく描いてきた。キャリアを通じて劇的な活躍を見せてきた「浪速の轟砲」が生んだ数々の名場面は、ファンの記憶と心に、いつまでも残り続けることだろう。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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