「好きな球団で戦えて幸せ」 戦力外→1年後日本一…DeNA中川颯が実感した「野球の楽しさ」

DeNA・中川颯【写真:矢口亨】
DeNA・中川颯【写真:矢口亨】

中川颯はプロ4年の今季初勝利、初セーブ、初本塁打などを記録

 昨季限りでオリックスを戦力外となりDeNAに加入した中川颯投手が、充実の移籍1年目を終えた。幼少期から憧れたベイスターズのユニホームで蘇り、日本一の景色を見たサブマリンは「やはり好きな球団で戦えるのはすごく幸せなこと。本当の野球の楽しさを実感しながら過ごせたかなと思います」と晴れやかな笑みを見せた。

 怒涛すぎるほどの1年間となった。オリックスから戦力外通告を受けたのは2023年10月5日のこと。それから1年後の2024年10月6日、バンテリンドームで行われた中日戦でプロ初セーブを挙げていた。それだけではない。今季はプロ初先発、初勝利、初ホールド、初安打、初打点に初本塁打まで……。「4年目で初めて1軍メインで戦えた。いろいろな場面で投げさせてもらって、すごく今後につながる1年だったかなと思います。なかなか打てるものじゃないので、本塁打は印象に残っています」と振り返った。

 3位から進出したクライマックスシリーズでは、ファイナルステージの巨人戦で3試合に登板して計3回1/3を投げ2安打無失点。日本シリーズでも3試合計3イニングで無安打無失点。完璧な救援でチームに流れをもたらした。小さいころから足を運んでいた横浜スタジアムで、下克上を成し遂げた一員となった。

 オリックスでの3年間で、1軍登板はルーキーイヤーの1試合のみ。2年目のオフに戦力外通告を受けて育成契約となり、2023年は春季キャンプに参加することもできず、支配下に上がるどころか再び戦力外となった。「昨年の今頃は退団して、基礎からトレーニングを一生懸命やっていた。途中離脱もあって今季に満足しているわけではないですけど、あのときの成果もあって1年間戦えた。一生懸命やってよかったなと思います」。苦い経験を思い出しながらも、自分の歩んできた道に胸を張る。

「昨年の今頃は心配ばかりされていた。今年は『よかったね』と…」

 シーズン序盤は先発を務め、8月7日の昇格後は救援に専念。「リリーフをやってからの方が自分の持ち味を出せることが多かった」とひとつの転機となり、チームに欠かせないブルペンの一員となった。一方で、見えなかった課題も手にした。

「成績で見たら全然まだまだです。課題がはっきり見えてきたのもあるし、やはり今までの3年間だとファームの課題というところだったので、1軍で戦ってみての課題って全然別物。そこがしっかり見えてきたというのは、このオフにやることも明確になってきたので、そこはよかったと思います」

 再スタートとなったプロ4年目は、自身にとって大きなシーズンとなった。何よりも明るい表情で、いきいきとプレーする姿が戻った。「昨年の今頃は心配ばかりされていた。今年は『よかったね』と言ってもらうことが多くて、ありがたいです。ルーキーの気持ちでいたし、初心はこれからもずっと持っていきたいですね」と気持ちを新たにした。

 26歳の右腕にとって、まだまだプロ野球生活は長いはずだ。「1年間怪我をしないで1軍にいる、戦力になる、というところが来年の目標のひとつにはなってくるので、体づくりからもう一回やっていきたいと思います」。ベイスターズが前回日本一になった1988年に神奈川県横浜市で生まれ“ベイ党一家”で育った中川颯は、大好きなチームで投げる幸せを噛みしめた。

○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。北海道総局で日本ハム、東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。

(町田利衣 / Rie Machida)

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