大谷翔平の“50-50”はルール変更のおかげ? 伝説OBが真向否定、パワー&スピード両立の意義

ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

Aロッドは1998年に42本塁打&46盗塁…「40-40は本当に難しい」

 ドジャース・大谷翔平投手は今季前人未到の「50本塁打-50盗塁」を達成した。54本塁打、59盗塁はともに自己最多を更新したが、盗塁数は2021年の26個から激増。昨年メジャーで導入されたルール改正が追い風になったと見る向きもある中、これに対して真っ向から“NO”を突きつける人物がいる。史上2人目の「40-40」達成者のアレックス・ロドリゲス氏だ。

“Aロッド”の愛称で親しまれたロドリゲス氏は16日、都内で行われたトークショー「MLBレジェンド、Aロッドが世界一オオタニの凄さを語る」に登壇した。日本ハムや阪神などで活躍した糸井嘉男氏、野球好きタレントの稲村亜美さんと大谷トークが盛り上がる中、糸井氏から「ピッチクロックや牽制回数の制限、ベースが大きくなったりと盗塁するのに有利だと言われています。Aロッドさんも現役時代に今のルールなら50-50、60-60もいけたんじゃないでしょうか」と質問が飛んだ。

 メジャーリーグは2023年から大幅なルール改正が行われた。ベースサイズが15インチ(約38cm)四方から18インチ(約45cm)四方に拡大。投手の牽制は3度目までにアウトにしなければボークとなり、走者は自動的に進塁することになる。そして投球間の時間制限「ピッチクロック」も導入された。投手は無走者なら15秒以内、走者がいる場合は20秒以内に投げる必要がある。いずれも打者や盗塁に有利なルールとされ、今季記録された3617盗塁は1900年以降では歴代3位だった。

 糸井氏に対し、「いい質問だ。(私が50-50ができたかどうかは)正直言ってわからない」とAロッド氏。数秒の間を置き、自身の見解を述べ始めた。「でも(言えることは)、野球というスポーツが(時間とともに)大きく変化したという点だ。思考を巡らせる競技だから、世界最高だと自負している。チェスのように戦略があって、全ての策に対して、対抗手段があるんだ」。

 同氏はマリナーズ時代の1998年に史上2人目の「40-40」を達成した。最終的に42本塁打、46盗塁をマーク。大谷が記録を更新するまで「42-42」は唯一の記録だった。「(40-40は)本当に難しい。普通はパワーがある打者は足がそこまで速くない。逆に足が速い選手はパワーがそこまでない。両方を持っているのはユニーク。完璧に調子がよくない限りできない。あと10試合くらいあればオオタニは『60-60』くらい達成できたと思う。集中力が本当にすごい」と称賛した。

 その上で自身の現役時代を引き合いに出し、「18歳の時にメジャー昇格した頃は守備、スピード、進塁打が(今)よりも評価された。今は主にパワーのぶつかり合いだ。打率、走塁、盗塁は(昔と比べて)あまり評価されなくなった。なので、彼が2024年に(盗塁を量産)していることは、私たちの時代に成し遂げたことと比べて、より素晴らしいことだ」と言葉を強めた。

 Aロッド氏は現役引退後、米放送局でアナリストを務め、現代野球への造詣が深い。長きに渡って一線でプレーし、変わりゆく野球観もその身で体感してきた。だからこそ「ルールが変わったから大谷は盗塁が増えた」との“安直”な考えに、一石を投じたのかもしれない。

(新井裕貴 / Yuki Arai)

JERAセ・リーグAWARD

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY