DeNAドラ1が忘れないイチローとの“約束” 「もっとやれた」…2年目に刻んだ“決意”
1000万円増の来季年俸2600万円でサイン
DeNAの度会隆輝外野手は21日、プロ入り初の契約更改交渉で1000万円増の来季年俸2600万円でサインした(金額は推定)。プロ1年目の今季は、セ・リーグ史上初めて新人で開幕から2戦連発。さらにプラスワン投票でのオールスターに出場するなど、華々しい活躍を見せた。だが、後半はやや尻すぼみだった。チームが26年ぶりの日本一に駆け上がったクライマックスシリーズ(CS)、日本シリーズでも出番なし。それでも来季へ向けて、高い目標を掲げた。
契約更改後、会見場に姿を現した度会の表情は意外に明るかった。もともと屈託のない笑顔が魅力で、プロ入り当初からスター性を感じさせる選手ではあった。チームが一大旋風を巻き起こしたポストシーズンの戦列に加われなかったことについては「(チームにとって)とてもうれしい気持ちが一番。ただ、自分がその舞台に自分が立てなかったことは率直に悔しいです。うれしさと悔しさで、難しい感情でした」と複雑な胸の内を明かす。しかし「自分のいい所も悪い所も見つけることができた。この1年が来年へ向けて大切な経験になった」とあくまで前向きに捉えていた。
そして「今年はもっとやれた、という気持ちが一番なので、目標は高くということで、来季は首位打者を取れるよ、というくらいの活躍をしたいと思います。その目標を達成できるように、今のうちから準備していきます」と言葉に力を込めた。
今季のスタートは華々しかった。昨年のドラフト会議で3球団競合の末、DeNAの1位指名を受けて入団。オープン戦では打率.434(53打数23安打)で首位打者に輝いた。開幕戦の第2打席でプロ初安打を3ランで飾ると、翌日の2戦目にも2ラン。誰もが新スター誕生を予感した。
しかし、プロは甘くない。開幕から21試合連続でスタメン「1番・右翼」を務めていたが、徐々に研究され、5月16日に初の2軍落ち。6月11日に1軍昇格を果たし、オールスターに出場するなど存在感を示すも、8月12日には再び出場選手登録抹消となった。シーズン終盤にも9月22日昇格→10月2日抹消の流れがあり、今季トータルでは75試合出場、打率.255(251打数64安打)、3本塁打、24打点に終わった。
「イチローさんはお忙しいので球場に来れたかどうかはわかりません」
来季の目標として「首位打者」を口にするのは大言壮語にも聞こえるが、度会は「1年間のうち、調子のいい時を長くし、悪い時を短くすれば、シンプルに結果はついてくると思います」と自信を持つ。「調子が悪い時にも、悪いなりにできることがあると思います。球が見えていないと思ったら、粘って四球を選び出塁率を上げれば、チームの勝利に貢献できる。ただ振る、打つだけでなく、“野球脳”をもっともっと高めていきたいです」と熱を込めた。
野球脳を鍛えると同時に、肉体改造も進めているそうで、「最近は周りに『体が大きくなったね』と言ってもらえていて、実際に体重は増えています。しかし、筋肉量が増えているだけで、体脂肪率は上がっていません。打球の伸びも変わってきたと感じます。ただ太るのは意味がないけれど、しっかりトレーニングをしながらの体重増加は、プラスでしかないと思います」と手応えを感じている。
度会は今年1月の入寮の際、年明けにイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)と会食したことを明かし、「その明るさを保ちながら一流選手になれるように頑張れ」、「度会くんが出ていたらめちゃくちゃ行きたいから、見に行くよ」と激励されたと語った。
そこから約1年が経過。「イチローさんはお忙しい方なので、(実際に球場へ)来られたかどうかはわかりませんが、そう言っていただけたことに感謝しています」とした上で、「見ていただけたら、もっと幸せなので、来季来ていただけるとしたら、その前で打てるように準備したいと思います」と1年前と同様に目を輝かせた。
イチロー氏も現役時代、プロ1、2年目は2軍で過ごす時間が長かったが、初めて1軍に定着した3年目、NPB史上初のシーズン200安打、当時パ・リーグ新記録のシーズン打率.385をマークするなど、歴史的な大ブレークを起こした。スーパースターの登場はいつも衝撃的だ。度会にもそれが起きないとは限らない。「首位打者」の目標が妥当だったことを、1年後に結果で証明してほしい。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)