元謙太の記憶に残る10日間 安達了一の「横で一緒に」…驚愕だった徹底した“準備力”
オリックス・元謙太「ほんとに印象に残る10日間でした」
レジェンドからの学びは忘れない。オリックスの元謙太外野手が、今季限りで現役引退した安達了一内野手兼任コーチに“弟子入り”してつかんだ準備の大切さ日々、生かしている。「プロ1年目、安達さんが2軍にいる時、ずっと隣にいて準備の仕方などを教えていただきました。今もそれを実践しています」。冷静な口調で振り返る。
元は中京高2年夏の甲子園で満塁本塁打を放つなど、ベスト4入りに貢献し、2020年ドラフト2位でオリックスに入団。弟子入りを勧めたのは、当時の高口隆行2軍内野守備走塁コーチだった。「(プロ)1年目はショートだったのですが、高校時代にあまりやっていなかったので、高口さんが2軍で調整中の安達さんと一緒に練習をしなさいとおっしゃって。遠征先のロッカーは隣で、ベンチでも隣に座り、アップも横で一緒にやらせてもらいました」。教えてもらって学ぶより、一挙手一投足を見て自分で何が大切なのかを考えて身に付けた方が将来、役に立つというコーチの判断のようだった。
1年目の春季キャンプで、初めてのシートノックは遊撃が安達と元、三塁が西野真弘内野手、二塁は大城晃二内野手、一塁にはT-岡田外野手が守備に就いていた。「もう、緊張しすぎて……」と振り返るが、弟子入りすることで主力選手との壁を徐々に取り除くとともに、身近な目標としてプロで大成してほしいという狙いもあった。
「なかなか喋れなかったのですが、試合前のどのタイミングから準備をし始めるかなど、ずっと横で見せていただいて、全部、教えていただきました。自分もそれで準備が早くなったと思います。安達さんは覚えているかわかりませんが、ほんとに印象に残る10日間でした」
元は、1年目にウエスタン・リーグで全試合に出場。外野手に転向した2年目は1軍デビューを果たし、初安打初打点をマークした。プロ4年目の今季、1軍出場は5試合にとどまったが、出場機会を求めて挑戦した三塁守備では、ピンチのマウンドに駆け寄り声を掛ける。これも、安達から学んだことだ。
来季はプロ5年目。大卒での同学年もドラフト指名を受け入団してくる。2位指名の寺西成騎投手(日体大)は、2019年夏の甲子園準決勝で対戦した星稜高のメンバーだった。「いい選手ばかりですが、比較せず負けないようにしっかりとやっていきたい。外野守備の自信はありますが、(再び)内野をやってみて手応えも感じました。出場機会があればどこでもいいのですが(更改の席上では)サードに挑戦するという意思も伝えました」と決意を新たにした。
今季2軍での打率は.250と、課題とされた打撃も向上。レジェンドから受け継いだ「準備」を基礎に、5年目に“恩返し”を果たす。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)