世界一を逃すも…26年WBCへ見えた収穫 専門家が指摘する大谷の前で生かす“機動力”
「藤平のブレーク、初選出辰己の躍動、坂倉の活躍は収穫」
野球日本代表「侍ジャパン」は、24日に東京ドームで行われた「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」の決勝でチャイニーズ・タイペイ代表に0-4で敗れ、大会連覇を逃した。とはいえ、これまで代表経験の少なかった若手が躍進するなど、収穫も多い。それを踏まえて、2026年3月に行われる次回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にどう臨むのか──。
井端弘和監督にとっては就任後17試合目にして国際試合初黒星となった。しかし、ヤクルト・村上宗隆内野手、巨人・岡本和真内野手らを故障で欠いていた事情があった。そもそもメジャーリーガーは参加しない大会で、侍ジャパンが最重視するのがWBCであることは間違いないだろう。
「そういう意味で、今大会で自信をつけた若手がWBCで何人戦力になってくれるかが重要。大会打率.387をマークした広島・小園(海斗内野手)の活躍、リリーバーの楽天・藤平(尚真投手)のブレーク、トップ代表初選出の楽天・辰己(涼介外野手)の躍動、広島・坂倉(将吾)が打てる捕手として代表でもやっていける力量を示したことは、貴重な収穫だったと思います」。こう指摘するのは、現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏だ。
「次回WBCでは“3番・指名打者兼投手”に大谷翔平を置き、それを中心としたメンバー編成になると思います」と野口氏。「今大会で活躍した辰己に1番を任せ、“2番・二塁”の座を小園と、怪我で出場を辞退した巨人・吉川尚輝(内野手)が争う形になれば、機動力がアップし、打ってよし動いてよしの1、2番になるでしょう。大谷を挟み、中軸の座を村上、岡本、カブス・鈴木誠也(外野手)が争えば、何でもできるメンバーになると思います」とうなずく。
正捕手争いは「レベルの高いものになるでしょう」
正捕手争いも激化しそうである。野口氏は「レギュラーシーズン終盤に骨折した影響で今大会には出られませんでしたが、相手の機動力を封じる抑止力という点では、DeNA・山本祐大が一番だと思います。地肩の強さは世界レベルです」と絶賛。「ベテランの甲斐(拓也=ソフトバンクから国内FA権行使)、ヤクルト・中村悠平らを加えての正捕手争いは、レベルの高いものになるでしょう」と目を細める。
来オフに村上、岡本和のポスティングシステムによるメジャー移籍が取り沙汰されていることは、一抹の不安ではある。メジャー1年目の選手は異国の環境、チームメートに慣れ、自分の実力をアピールしてレギュラーの座を確保するためにも、所属球団のキャンプ、オープン戦を、時期的に重なるWBCよりも優先するのが普通だ。
ただ、前回WBCでは吉田正尚外野手がその前例を破り、本人の強い希望で1年目のシーズンを前に参加。「そこの考え方や事情は、選手個々違うと思いますが、吉田のお陰で、今後はメジャー1年目の契約を交わす時から“日本代表に選ばれた場合は、チームのキャンプ、オープン戦よりも、そちらを優先する」と一筆加えるような選手が増えるかもしれませんね」と野口氏は期待する。
若手中心で臨んだプレミア12には敗れたが、だからこそ肝心のWBCで前回以上のメンバーが実現した──という結果になれば、何よりだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)