「自分がいた感覚がなくて…」大和が語るDeNA日本一 牧秀悟&山崎康晃との“絆”

DeNA・牧秀悟、大和、山崎康晃(左から)【写真:矢口亨、荒川祐史、小林靖】
DeNA・牧秀悟、大和、山崎康晃(左から)【写真:矢口亨、荒川祐史、小林靖】

牧は日本一の直後、“師匠”大和の打撃用手袋をアピール

 DeNAはソフトバンクとの日本シリーズを4勝2敗で制し、26年ぶりの日本一に輝いた。主将を務める牧秀悟内野手は、歓喜の輪が解けた瞬間、カメラに向かって打撃用手袋をアピール。今季限りで戦力外となり、ポストシーズンは不在だった大和内野手のものだった。牧だけでなく山崎康晃投手らにとっても精神的な支えだった37歳のベテランは、穏やかな表情で率直な思いを明かした。

「一緒にやっていた仲間だし、頑張ってくれという思いで見ていましたよ。でも他人事じゃないけど、不思議とそこに自分がいた感覚がすでになくて……。なんか違う人たちだなという感覚に陥ったかな。なんで自分がここにいないんだろう、とかそういう感覚は一切なくて、勝ってくれという思いでした」

 自主トレをともにしていた牧がとった行動を知ったのは後のこと。「いろいろな人から聞いて、YouTubeで見て。やってくれたことは素直にうれしいですし、ありがたいですよね」。牧は日本シリーズでも大和の登場曲を使用するなど“師匠”とともに戦っていた。牧からはすぐに「日本一になりました。大和さんのおかげです」とLINEが届いた。これに対して「お疲れさん。みんな楽しそうに野球をしていてよかった。よう頑張った」と返信。そこには強い信頼関係があった。

 牧は「今までお世話になった先輩でもありましたし、ああいう形(戦力外)になってしまったので何とか一緒に戦うんだという思いでやらせていただきました」と行動の意図を語る。「いつでも、どの試合でも、どんなときでも頼りになる人なので、忘れることはなかったです」と思いを馳せた。

感謝の山崎「チームの心が動く時に必ず大和さんの存在があった」

 大和への感謝の報告は、山崎からも届いた。実は巨人とのクライマックスシリーズの際に相談を受けており「すごく落ち込んでいて長文LINEをしたんですけど、でも日本シリーズでも頑張っていましたから」。気持ちを切り替え奮闘した後輩を優しく称えた。

 山崎は言う。「シーズン中から、苦しいときにすごく相談していたのが大和さんでした。僕にとって一番相談しやすい、心から話せる仲間。このチームの精神的支柱というか、牧もそうですけどメンタリティの部分ですごく助けられていました。本当のことを言うと寂しかったですし、一緒に日本一の景色を見たかったんですけど……」。

 9月15日に出場選手登録を外れて以降、大事なシーズン終盤もポストシーズンも背番号9がベンチに入ることはなかった。だからヒットを打つことはできないし、好守で盛り上げることもできない。でも後輩たちが頼る先にはいつも、大和がいた。その貢献度は計り知れない。

「チームの心が動くときに必ず大和さんの存在があった。残してくれたものは大きいと思います」という山崎の言葉が全てだろう。冷静に状況を把握して、心に寄り添ったアドバイスを送ることのできる大和は、そこにいなくても日本一となったチームを陰で支えていた。

○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。北海道総局で日本ハム、東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。

(町田利衣 / Rie Machida)

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