西武ベテランが奏でる“絶妙なバランス” 37歳を弄る41歳…逆襲へ欠かせぬトリオ
“世代ギャップ”を埋める炭谷「みんながやりやすいように」
逆襲には、ベテラントリオの活躍が欠かせない。西武の中村剛也内野手、栗山巧外野手、炭谷銀仁朗捕手は16日、埼玉・所沢市内でそろって自主トレを公開した。同い年の中村と栗山は今年中に42歳となり、球界野手最年長にランクされる見込み。炭谷は4歳下だが、3人の関係は絶妙にバランスが取れている。
現在「球界最年長選手」の座には、今月22日に45歳となるヤクルト・石川雅規投手が君臨している。昨年限りで和田毅氏(前ソフトバンク投手)、ヤクルト・青木宣親GM補佐(前外野手)、オリックス・比嘉幹貴投手コーチ(前投手)の3人が現役を引退。昨年限りで中日を戦力外となった42歳の中島宏之内野手が、このままNPB球団と契約しない場合は、現在41歳5か月の中村が2位、1か月違いの41歳4か月の栗山が3位となる。中村は野手では最年長となる。
2001年ドラフト会議で中村は2位で大阪桐蔭高、栗山は4位で兵庫・育英高から同時に入団した。以降、現在に至るまで2人とも西武ひと筋にプレーし、今年プロ24年目を迎えた。中村は「それほど意識はしていませんが、お互いに切磋琢磨しながら若い時からやってきましたし、その関係は今でもあまり変わっていないと思います」と感慨深げだ。栗山も「そんなつもりでシーズンに臨んでいるわけではないけれど、同期入団で同い年の選手がいるということには、どこかしらで刺激を受けていると思います」とうなずく。性格もプレースタイルも違う2人だが、長い“共闘関係”に裏打ちされた強い絆をうかがわせた。
そして、絶妙の立ち位置にいるのが37歳の炭谷である。2005年ドラフト1位で京都・平安高(現龍谷大平安高)から西武入りし、13年間プレーした後、2018年オフに海外FA権を行使し巨人へ移籍。さらに楽天を経て、昨年6年ぶりに古巣復帰を果たした。「僕が去年西武に帰ってきてみると、中村さん、栗山さんと、その下の世代の間がだいぶ空いていた。僕の“キャラ”を生かしつつ、チームのみんながやりやすいように考えてやってきたつもりです」と胸の内を明かす。
中村「炭谷が僕より年上みたいな雰囲気を出してくる」
炭谷は持ち前の“コミュ力”も駆使し、チーム内で最年長コンビと他の選手たちとの“橋渡し役”を果たした。昨年限りで増田達至氏(前投手)、岡田雅利氏(前捕手)、金子侑司氏(前外野手)らが引退したこともあって、仮に炭谷がいなかったら、“中村&栗山世代”から33歳の平井克典投手まで、8年も空白ができてしまうところだった。
もっとも復帰1年目の昨年、チームは球団ワースト記録の91敗を喫して最下位に沈んだとあって、炭谷は「去年の成績を踏まえて、もっと違う形で、チームのためにいろいろなことをやらなければいけないと感じています」と反省も忘れていない。
この日の自主トレ公開後の記者会見。3人はそろって報道陣の前に立った。中村は、今季に懸ける思いを聞かれると「僕は何もありませんが、“炭谷さん”がプロ20年目なので、頑張ってほしいなと思います」。3人の関係の変化を聞かれると「最近、炭谷が僕より年上みたいな雰囲気を出してくる。昔はかわいかったのに……」と炭谷をイジリまくった。「(炭谷は)イジリがいのあるやつです。年下の選手からはイジられないと思うので、僕らがイジってあげないと、あいつの良さが出ない」と笑い、実に楽しそうだった。
一方の炭谷は中村と栗山について「何歳になっても、僕がプロ入りして入寮した時から変わらない2人です。ふざける時はふざける。偉大な先輩は他球団にもいますが、僕にとって“お兄ちゃん感”が強い。よくしてもらっています」と首を垂れる。
西武が最後に日本一になったのは2008年。当時のメンバーで今も現役を続けているのは、この3人だけになった。炭谷は「また3人そろって、ビールかけをしたいですね」とボルテージを上げた。強いチームには必ず経験豊かなベテランがいるもので、西武もその条件は満たしている。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)