DeNA戦力外から3年「絶対にメジャーに行く」 異国から目指す憧れの場所…30歳の思い
元DeNAの乙坂智は海外でのタフな環境でプレーし続けている
2021年までDeNAで10年間プレーした乙坂智外野手はウインターリーグを含め、メキシコやベネズエラなど中南米の複数の球団でプレーした。タフな環境に身を置いたことで、日本がいかに恵まれているのかを痛感。その一方でNPBに所属する若手こそ、異国での厳しい状況を経験する必要があると力説した。そして、自身のこれからについても「絶対にメジャーに行くという思いは変わりません」との胸中も明かした。
10時間以上は当たり前のナイター当日のバス移動。虫がたかる食事、治安の悪さ、野球道具が“消える”ロッカールーム……。日本では考えられないような経験を山ほど経験してきた。
「これまでは辛いことにフォーカスしていたけど、今ではその場にいられることに価値を感じられるようになりました。環境は日本より厳しいですけど、心はかなり充実しています。そこにはハッピーな人が多いんです。自分も周りの人が笑ってくれたらいいなと思うようになりました」
現在は多くのNPB球団が、オフに自チームの選手をウインターリーグに派遣している。アジア圏や豪州、中南米など、それぞれの地域に特性はあるが、乙坂は若手選手こそ過酷な環境を肌で感じてほしいと願っている。
「日本は環境が整備されていて、不自由に感じることは少ないと思うのですが、そこに慣れて欲しくないです。海外で生きるために野球を仕事としている人々と触れ合って、どういう気持ちで野球をやっているのか、考えを聞いてほしいですね。日本のプロ野球界に入ったばかりの人が違った文化を感じることで、日本の良さを知り、海外の良さも知ることができると思う。そこから、野球に対する取り組み方が変わるんじゃないかなと思います」
「与えられたところで100%で楽しむ人間になりたい」
乙坂自身、2017年オフの単身でのメキシコへのウインターリーグ参戦後、毎年のように中南米や米独立リーグでプレーした。2024年シーズンはメキシカンリーグ「レオネス・デ・ユカタン」(米名称ユカタン・ライオンズ)に所属した。
「今までは絶対にメジャーに行きたいと思っていて、『それは絶対に無理』と言う人を見返してやろうという気持ちがありました。そこしか見ていなかったというか、ゴールしか見えていませんでした。でも向こうでプレーを続けているうちに、その過程にある日常の小さな幸せを楽しめるようになりました。その積み重ねこそ、未来に繋がっていくんだと思えるようになりました」
“視界”が広がった自分を実感している。「この先、どんなことが待ち受けているか想像はつきませんが、絶対にメジャーに行くという思いは変わりません」。2025年シーズンの所属球団はまだ決まっていない。たとえ“遠回り”となっても、置かれた環境で野球を楽しみながら、憧れの舞台を目指す気持ちに変わりはない。
「与えられたところで100%で楽しむことができる人間になりたいですね」。経験豊富な30歳の中堅プレーヤーはオファーを待ちながら、このオフも自主トレで汗を流し続けている。
(湯浅大 / Dai Yuasa)