“紆余曲折”元阪神エースの今 バー経営→指導者へ、外から眺める甲子園

元阪神・川尻哲郎氏【写真:山口真司】
元阪神・川尻哲郎氏【写真:山口真司】

川尻哲郎氏は現役引退後、BC群馬の監督などで活躍

 元阪神エースの川尻哲郎氏は現在、東京・新橋のスポーツバー「TIGER STADIUM」店主としても“活躍中”だ。2005年に楽天でプロ選手生活にピリオドを打った後は、楽天ジュニアコーチ、独立のルートインBCリーグ・群馬ダイヤモンドペガサスの投手コーチ、監督などを歴任。経験を積み重ねながら野球と携わり続けている。店では古巣・阪神を応援する立場でもあり、野球評論家でもあるが、それとは別にいろんな活動も行うマルチぶりも見せている。

 2005年に楽天で現役を引退した川尻氏は2006年、楽天ジュニアのコーチに就任した。その年の12月26日から12月28日までヤフードームで行われた「NPB12球団ジュニアトーナメントENEOS CUP 2006」では優勝も経験した。野球評論家などを経て2013年3月から群馬の投手コーチを務め、同年10月に監督となり、2014年シーズンはリーグ総合優勝にも導いた。

「独立リーグでは監督を経験させてもらいましたけど、外から見るのとはグラウンドの景色が違うし、すごいグラウンドでの采配というのが難しいというのもわかった。ちょうどラミちゃん(元ヤクルト、巨人、DeNA外野手のアレックス・ラミレス氏)や(元阪急・オリックス、阪神、ダイエー内野手の)松永(浩美)さんが(群馬の)コーチだったりしたので、バッティングのことも聞いたりして勉強できたのもよかったと思う」

 2015年10月に群馬の監督は契約満了で退任したが「いろいろ勉強して、群馬で野球塾とかやりましたし、教える難しさもよくわかった」と話す。2020年12月に東京・新橋に居酒屋「虎尻」をオープン。「2021年の2月に(新橋の)今の場所に移りました」。店名もスポーツバー「TIGER STADIUM」に変えて現在に至っている。川尻氏の“阪神戦生解説”は売りのひとつだが「最近は(阪神)応援に主を置くことが多いんですよ」と笑みを浮かべた。

阪神ファンが集まるスポーツバーを経営…自身も古巣を熱烈応援

「阪神ファンの人って応援が楽しいんですよ。静かに見たい人もいるだろうけど調子に乗ってきてワーッと応援するのが一番の醍醐味なんだとわかったので、僕も応援できるようにね。お客さんの提案の中で7回にジェット風船を飛ばしたり、勝っている時に“あと1人”もやるし六甲おろしも歌います。選手の応援歌も歌えますよ。阪神OBがやっているバーという形で、阪神ファンが集まって応援したりするスタイルの店は関東では他にない。喜んでもらえるお店を作れたのはよかったと思っています」

 基本的に川尻氏は店にいるという。「シーズンオフはその年の(阪神戦の)映像とか優勝した時の映像とかを流しながら楽しんでもらっています。僕もいろんなことを聞かれるのでOBの意見として話をしています」。店の看板メニューのひとつは「川尻哲ローストビーフ」だ。「嫁が厨房に入っていますけど、料理は全部うまいですよ。“川尻哲ローストビーフ”の肉の仕入れは僕がやっています。(阪神時代の背番号)19にちなんで1900円。これが人気No.1ではないけど、みんな『おいしい』って言ってますね」。もちろん阪神優勝を願っているのは言うまでもない。

 まさに充実の日々のようだが、川尻氏の挑戦は続く。2025年シーズンからは同じく阪神OBの的場寛一氏が監督を務める独立の北海道フロンティアリーグ・石狩レッドフェニックスの臨時投手コーチに就任。“第2の川尻投手”育成が期待されている。さらにタレントとしても活動中で野球と向き合いながら、その行動範囲は実に広い。「新橋の店が僕のホームグラウンドなので、そこを中心にまぁ、楽しくみんなでやっていけたらなって思っていますけどね」。

 日大二高、亜大、日産自動車、阪神、近鉄、楽天……。川尻氏のここまでの野球人生は決して平坦ではなかったが、その時、その時に培ったものを次へ、次へと生かしてつなげている。将来はNPBで指導者になることもあるかもしれない。「それは縁があればって感じくらいですけどね」。かつて阪神ファンを大いに沸かせたサイドスロー右腕は、今も「TIGER STADIUM」店主として阪神ファンを沸かす。その“野球ドラマ”はまだまだ今後も楽しみいっぱいだ。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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