突然通告された“事実上の解任” 奮起促すも…3日後に激変した状況「申し訳ない」
2019年にオリ監督に就任した西村徳文氏は2020年途中に辞任が発表された
ロッテの監督として2010年に“下剋上日本一”を成し遂げた西村徳文氏は、オリックスで2016年からヘッドコーチを務め、2019年に監督に就任した。しかし同年3年ぶりの最下位に沈み、2020年も低迷。シーズン中に辞任が発表されたが、“事実上の解任”だった。
新型コロナ禍で開幕が遅れたこの年。最初の9連戦で1勝8敗と苦しい船出となった。その後も状況は上向かず、借金だけが増えていった。8月20日の西武戦で4度目の4連敗を喫したオリックスは試合後、西村監督に辞任を要請し承諾されたと発表した。
「広報が来て『社長が呼んでいます』と言われたときに『これは……』と思いました。前年が最下位だったこともあって、雰囲気で感じるものはありました。辞任要請を飲んだという記事が出たのであればそれでいいんですが、自分はとにかく途中で投げ出すのがすごく嫌な性格の人間なんです。仕方ないですが……」。現実は、事実上の解任だった。
そうしてオリックスでの5年目はあっけなく終わった。「勝負事は勝たないといけない。あのときは負けていたので当然のことだと思うし、受け入れるしかない」と責任を背負ったが、心残りがあった。
65歳の思い「もう一回ユニホームを着たい。完結していないんです」
実は事実上の解任となる3日前、選手全員を集めて「まだ8月だから巻き返すことができる。ここからやっていこう」というミーティングをしたばかりだった。シーズン終盤に向けて機運を高めていたはずが……。「辞任要請を飲んだという感じになって、1人だけ投げ出すのかと思った選手もいたのではないか。悔しさもたくさんありましたし、すごく選手に対して申し訳ないなという気持ちでした」。
あれから4年以上が経ち、1月9日に65歳となった。現在は子どもたちへの指導などを行いながら「野球に携われていることが一番」と“恩返し”を続けている。一方で、いまだ心の炎は燃えている。
「もう一回ユニホームを着たい。どういうポジションでもいいんですけど、まだまだ気持ちが強いので。やはり自分の中では中途半端に終わったというところで、完結していないんです」。志半ばで脱いだユニホーム。西村氏の野球人生は続いている。
(町田利衣 / Rie Machida)