戦力外→引退で「一からやり直したい」 プロ14年の大砲が保険営業マンに転身したワケ

元日本ハム、ヤクルトの鵜久森さんはソニー生命でライフプランナー7年目
日本ハム、ヤクルトで計14年間プレーした鵜久森淳志さんは今、ソニー生命保険株式会社でライフプランナーとして活躍している。野球界を去り早7年。ビジネスマンとしての姿もすっかり板についている。ヤクルトを戦力外となり現役引退を決断後に異業種に飛び込んだ理由や、現在の仕事について聞いた。
現役引退後、まず迫られたのが野球界に残るか、違う社会に出るかという選択だった。「野球は正直お腹いっぱいで、僕の中では一からやり直したいなと思いました」と挑戦することにしたが、実際に“何をするか”は見えてこない。多くの人の話を聞く中で、すでにソニー生命で働いていた元ロッテの青松慶侑さんをキッカケに「プロ野球選手時代にファンの人に返せたことがあるのかなと思って、次は返せる仕事をしたいと思いました」と決意。5回程度あった面接をクリアして入社した。
1日の流れは商談の予定によってさまざま。休日に急な対応が入ることもあるが、すべては「お客さまのため」だ。「本塁打を打って喜んでくれる人はたくさんいるけど、直接顔が見えることはなかなかありませんでした。今のやりがいは『ありがとう』『よかった』という言葉を直接いただくことです」と目尻を下げた。
就職当初は苦労も多かった。「プロ野球選手時代は、本当に外に出ない人だったんです。人に会うなら練習したいタイプだったので」。それが一変、とにかく人に会った。知人らには「一度話を聞いてください」とお願いし、断られてもアタックした。初年度に会った人数はおよそ200人。「心折れそうになりました」と振り返るが、努力は実を結んだ。
38歳での目標は「この業界でのトップ営業を目指していきたい」
全世界の生命保険営業職のトップクラスのメンバーで毎年構成されるMDRTに4年目で初登録され、これまで3度登録の実績を持つ。営業成績が収入に反映される点は、結果を残せば給料が上がるプロ野球界と似ているかもしれない。しかし鵜久森さんは「もっと責任が重いです。自分のためではなく、お客さまになっていただいた方々への責任があるので。綺麗事に聞こえるかも知れないですけど、お客さまの役に立ちたいという思いです」と語気を強める。
厳しい勝負の世界に身を置いてきたことは、現在にも活きている。「小さい頃から野球をやっていてよかったと思うのが、まず挨拶。あと日本ハム時代、特に若手の頃はずっと試行錯誤していたので、どうすればよくなるか常に考えたことは今の仕事になっても良かったかなと思います。野球って心理戦のところもあるので、投手や捕手が何を考えているかみたいな感性が磨かれて、お客さまが何を悩んでいるか考えたりできるところはありますね」と胸を張った。
38歳となった今の目標は「この業界のトップ営業を目指していきたいのが一番。一つの通過点ではあるんですけど、そうなったときに初めて自分の中で野球より頑張れたなって思えるんじゃないかな。今はまだまだ。時間が経てばなれるという話ではないので、1年1年、毎日毎日、必死にやっていきます」。仕事は違えどあの頃と同じように、情熱と誇りを胸に頂点を目指している。
(町田利衣 / Rie Machida)
