侍J選出の太田椋が持つ「誰にも抜かれない記録」 怪我に泣く時期も…乗り越えた“秘策”

侍ジャパン合同練習で汗をながすオリックス・太田椋【写真:小林靖】
侍ジャパン合同練習で汗をながすオリックス・太田椋【写真:小林靖】

オリックス・太田椋、侍J選出に「入れた喜びを感じます」

 雌伏6年、大きく羽ばたく時がきた。オリックス・太田椋内野手が、度重なる怪我の間に行ったトレーニングによる肉体改造を打撃向上に結び付け、侍JAPAN入りを果たした。プロ7年目の今季はキャリアハイと、ベストナイン獲得を目指す。

「選んでいただいたことは本当に光栄なこと。小さい時から(侍JAPANを)見ていて、すごい選手の集まりというイメージがあるので、そこに入れた喜びを感じます。バッティングは1番の持ち味なので、そこを見ていただきたいと思います」。24歳の誕生日に届いた日本代表入りに、声を弾ませた。

 太田は春季キャンプ中の2月14日、日本野球機構とNPBエンタープライズが発表した野球日本代表「侍ジャパン」とオランダとの強化試合「ラグザス 侍ジャパンシリーズ2025 日本vsオランダ」(3月5、6日・京セラドーム)の出場選手にチームメートの宮城大弥投手、曽谷龍平投手とともに28人の中に名前を連ねた。中学時代にはU-15日本代表として「アジアチャレンジマッチ」に出場したが、シニア代表は初めてのことだ。

 太田は天理高から2018年ドラフト1位でオリックスに入団。広角に長打を放つ打撃には定評があり、プロ3年目の開幕戦に「2番・二塁」でスタメン起用されるなど首脳陣の期待は大きかった。初球から積極的に振っていくのが太田のスタイル。2022年の日本シリーズ第7戦では史上初の「初回先頭打者初球本塁打」も記録し「これからも、誰にも抜かれない記録ですね」と胸を張る。

 だが、度重なる怪我が進化を足踏みさせてきた。プロ1年目の春季教育リーグで死球を受けて右尺骨を骨折、2年目は走塁で相手野手と交錯して肋骨を骨折した。2023年は左手首を痛めて約3か月間戦列を離れ、復帰直後に同じ箇所を痛めて手術に踏み切った。

 手首の不安を解消した昨季は、5月下旬から「3番」で連続起用され3割近い打率をキープしていたが、7月中旬に走者として一塁を駆け抜ける時に右かかとを痛め、約1か月間、戦列離脱した。しかし、最終的に自己最多の91試合に出場し、打率.288、6本塁打、40打点を記録。侍JAPANの井端弘和監督から「二遊間を守れる右打者。1、2番で(の起用を)考えている」と高く評価されることにつながった。

怪我で離脱中に行った山下舜平大とのウエートトレーニングに“効果”

 打撃向上の秘密の1つが、怪我で離脱中に行った山下舜平大投手とのウエートトレーニングだったという。「一昨年は一緒に(トレーニングルームに)いたんで。ペータは(用具の)引き方や押し方などを考えてやっていて、参考になりました。押しは背筋の強い僕の方が、ペータは引く方が強かったですね」。計画的にトレーニングを組み、ブレることなくやり通す山下に触発される形で、「入団時とは全く違う体になりました」という。

 特に胸板の厚さは大きく増し「スーツなんか、昨年のは入りません。私服も困ります」と頭を抱えるほどだ。肉体改造の成果は、打球に表れた。「筋力がついて、感覚的にちょっとスイングが強くなりました。少し(バットの)芯を外れても(野手の間を)抜けていく感じがあります」。今年のキャンプでも打球速度を上げ、広角に強い打球を飛ばすことをテーマに掲げる。本塁打は2桁が目標。「本塁打で試合が決まることが多く、15本以上は打ちたい。打球速度が上がれば、抜かれた球や差し込まれた打球でもスタンドに届いてくれる」と目論む。

 今季の目標は、キャリアハイと「ベストナイン」。実現するためには、1年間フルに出場して成績を残さなければならない。「1年間を通してプレーしたことがなく、どうなるか分からないので、まず規定打席を目指します」と打席に立ち続けることを目標に定める。

 パ・リーグの2024年ベストナインの「二塁手」は小深田大翔内野手(155票)。太田はプロ入り後、初めて票を得たが「4票」で6位にとどまった。「数字を求めちゃうとダメなんで、1番は二塁でベストナインを獲ることです。リーグで1番いい選手がそこに入ると思うんで」。未完の大器が、静かに高みを目指す。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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