つば九郎担当者は「天国で見て下さっている」 忘れぬ言葉…廣岡大志が“恩人”に届ける感謝

オリックス・廣岡大志、つば九郎担当者は「天国で見て下さっている」
オリックスの廣岡大志内野手が、2月19日に急逝したヤクルト・つば九郎の担当者に、今季の活躍を誓った。「びっくりしました。ヤクルト愛が深い人。あれだけ時事ネタを面白く扱って、やっぱり頭がいいですよね。残念な気持ちと、寂しい気持ちしかありません」。突然の悲報に言葉を詰まらせた。
廣岡は、智弁学園(奈良)から2015年ドラフト2位でヤクルトに入団。プロ1年目の9月、DeNA戦に「8番・遊撃」で先発出場し、第1打席に3ランを放ち「初打席初本塁打」を記録するなど、勝負強い打撃が魅力。常に全力プレーを怠らないことでもファンに知られている。
一方、つば九郎はつばめをモチーフにした球団公式マスコットとして1994年4月9日の阪神1回戦(神宮)で初出場した。12球団で唯一、ユニホームをまとわない愛らしい姿と、時事ネタなどを駆使したユーモアのセンス溢れるフリップでのコメントで、ヤクルトファンだけでなくプロ野球ファンに愛された。2022年にはホームゲーム通算2000試合の“偉業”を達成した。
しかし、体調不良のため2月6日に球団から長期休養が発表され、19日には「つば九郎を支えてきた社員スタッフが永眠いたしました」として「今後の活動については、しばらくの間休止となる」ことが公表された。
廣岡には、忘れられない思い出がある。春季キャンプを終えたばかりの2021年3月1日。巨人への交換トレードを告げられ発表会見のため訪れた球団事務所で、偶然、社員スタッフに出会い「お世話になりました」と頭を下げた。
社員スタッフとは、何度か食事をともにしたことのあるチームの仲間。発表前だったが、事前に報告だけはしておきたかった。「頑張って下さい」という短い言葉に、新たな環境に向け背中を押してもらった思いがした。
つば九郎が廣岡へ綴っていたメッセージ
つば九郎はその日「たいしくん。」のタイトルで、新天地での成功を祈るブログを綴った。「これが、ぷろってやつなのか~」で始まる記事は「きゅうだんじむしょによばれていったら、ひろおかくんがいました。めずらしいな、きゃんぷからもどってすぐにじむしょなんて。するとすうふんご~とれーどのはっぴょうが……」
「じゃいあんつにいくことがきまりました。まだ、あたまがこんらんしてると。そりゃそうだ。ふあんだらけでしょう。これから、ろっかーのせいりとか、いろんなひとにほうこくとかあるんでしょうね。さみしい。せつない。ほんにんから、だいすきなやくるとすわろーずから、じゃいあんつへとれーどになりました。のことばをきいたとき、はなのおくが、つんときた。こみあげるものが」
「でも、せ・りーぐゆうしょうちーむのじゃいあんつから、およびがかかるなんて、すごいことです。これからもよろしくね、おうえんしてるよ! とがっちり。これからもよろしくおねがいします、ありがとうございましたといわれ、ただ、かたをたたいて、ほほえむしかなかった」
さらには「はなれていてもいつもともだち、じゃいあんつにいってもおうえんします。じゃいあんつふぁんのみなさん、ひろおかたいしくんを、よろしくおねがいいたします。おかもとくん、ぱいせんとしてちゃんとおしえてあげてね~ぺこり」と、巨人ファンと高校の1年先輩にあたる巨人・岡本和真内野手に配慮もお願いした。
ただ「ひろおかくん、たおるは、まわさないからね~でへへ」と、活躍してもオレンジのタオルを回さないという軽めの“毒舌”で締めることも忘れなかった。廣岡は2023年5月に、交換トレードで巨人からオリックスに移籍したが、その後も交流は続き、神宮球場で先発メンバーがアナウンスされる際には、敵チームにもかかわらず、つば九郎は両手を突き上げたり、練習中の廣岡にちょっかいを出したりして、応援する姿を見せ続けてくれた。
今季、プロ10年目を迎える廣岡。キャンプでは「レギュラーを獲るつもりです」と、課題とされる打撃を磨くため、体調不良で「コーチ指示」のメニューとなってもバットを振り続けた。「毎年、交流戦で会うのを楽しみにしていたんですが……。天国で見て下さっていると思うので、いい姿を見てもらえるように頑張りたいと思います」。翼を羽ばたかせ、空から見守ってくれているつば九郎に、静かに飛躍を誓う。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)
