日米間に「グレーな部分」 OB唱えた危機感、逸材の“挑戦”に理解も「ルール作るべき」

アスレチックスとマイナー契約を結んだ森井翔太郎【写真:Getty Images】
アスレチックスとマイナー契約を結んだ森井翔太郎【写真:Getty Images】

増えつつあるNPBを経由せず米挑戦する日本人選手

 ドジャースとカブスの東京シリーズ開幕2連戦に、日本中がメジャーリーグの話題で盛り上がった。巨人OB会長の中畑清氏は「これだけ日本人選手がいるメジャーの試合を生で見られる。ファンが増えているのはいいこと」とする一方で、プロ野球を経由せずに海を渡る日本人選手が増えそうな状況に危機感を募らせている。

 今年1月、桐朋高の森井翔太郎投手がアスレチックスとマイナー契約。高校通算45本塁打を放ち、投げては最速153キロを誇る二刀流の逸材は14日(日本時間15日)にルーキーリーグで米デビューを果たした。中畑氏は「夢を語られたら、こちらはどうしようもない。夢をさえぎることはできない」と森井の挑戦に理解を示した上で「日米間で、ある程度のルールを作るべき」と提言する。

 過去にNPBを経由せずに米挑戦した主なアマチュア選手には、2002年にロッキーズにドラフト指名された坂本充外野手、2009年にナショナルズから指名された鷲谷修也外野手がいる。2人はともに高校卒業後に渡米して進学した。また2018年にはパナソニック・吉川峻平投手がダイヤモンドバックスとマイナー契約。ただ、いずれの選手もメジャー昇格することなく引退している。

 最近では昨年、花巻東高を卒業した佐々木麟太郎内野手が名門スタンフォード大に進学。また昨年12月には、25歳の迫勇飛(さこ・ゆうひ)投手がメッツとマイナー契約を結んだ。

 そんな中で、マック鈴木投手はマリナーズ時代の1996年、NPBを経由しない初のメジャーリーガーに。MLB通算117登板で16勝を挙げた。多田野数人投手は渡米2年目だった2004年にインディアンスでメジャー初登板。通算15試合に登板した。田澤純一投手はレッドソックス時代の2013年にワールドシリーズ制覇を経験するなど、通算388試合に登板した。森井はプロ野球未経験者で4人目となるメジャーデビューを目指している。

 日本球界のさらなる発展を願う中畑氏は「実際に成功例みたいな感じで、当たり前の形になっていくことは避けてほしい」と懸念。「夢を邪魔することはできないけど、1度は日本のプロ野球に在籍して、何年間か足跡を残した上でトライしていく。そういう流れで、日本に恩返しをしてから挑戦するというのがあってもいいんじゃないかなと思う」と続けた。

 何より不満なのは、日米間に明確なシステムが存在しないこと。「野球界にはグレーな部分がある。クリーンにして、仕組みを分かりやすくしないと」と強調。そのために「ちゃんとしたルールを作らなきゃいけない。ルールがあったらみんな納得できる」と早期のルール作成を訴えた。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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