「マウンドに上がるのが憂鬱」 現ドラ→1年で戦力外…狂い続けた歯車、消えた自信

楽天を1年で戦力外となった櫻井周斗は台湾・台鋼ホークス入団決定
楽天を昨季限りで戦力外となった櫻井周斗投手が、台湾プロ野球・台鋼ホークスに入団することが決まった。2023年オフにDeNAから現役ドラフトで移籍してわずか1年だったが、昨季後半は「マウンドに上がるのが憂鬱」と、どん底に陥っていたことを明かした。
5月10日に楽天で初めて1軍登録されると、4試合連続無失点の好スタートを切った。しかし21日のソフトバンク戦だった。0-9の4回無死満塁で登板すると、相手打線の勢いを止められずに1イニングを6失点。また2軍調整を経た7月10日のロッテ戦でも、1-8の初回無死満塁から出番が来たのだ。3回までは無失点でしのいだが4回に崩れて4失点。これが最後のマウンドとなった。実際には大量失点を喫した2試合以外は失点を許していないが、楽天では8試合で防御率8.44という数字が残った。それでも決して言い訳をしなかった。
「厳しい場面でいくことはわかっていたので、その辺の割り切りはできていました。結局、そこを乗り越えられる人が残っていく世界じゃないですか。だからそこを抑えられる人間でありたかったなと思います」
後半戦でやり返す――。そんな思いを胸に抱いていたが、歯車は狂っていく。状態は上がらず、勝負の土俵にすら立てない。ライバルたちがどんどん1軍でのチャンスを掴むのを、見ていることしかできない。自分を取り戻すことができず、苦悩した。
「自分の中でもどんどん自信をなくしてしまっていました。全然ストライクが入らなくて、アウトを取れないで交代したり……。ブルペンでも全然ダメ。でもシーズンは続いているから、何とか上(1軍)に上がりたくていろいろ模索して、アドバイスもいただいて試しながらやるけどうまくいかないっていう感じでした」
トライアウトへの調整で光「ダメなら終わりと吹っ切れたのも大きかった」
時間だけが過ぎ、10月には戦力外通告が待っていた。不完全燃焼からすぐにトライアウトを受けると決め、ひたむきにトレーニングに励んだ。そんな期間が、長いトンネルの中でもがいていた左腕を変えた。
「とにかく自分と向き合い、自分で考えてやった結果、ある程度取り戻すことができました。あとはシーズンで『野手に申し訳ない』とか『ベンチに帰りたくないな』となってしまっていたマインドから開放されたというか、ダメだったらもう終わりだと吹っ切れたのも大きかったかもしれないです」
そうして挑んだトライアウトでは武器のスライダーで左打者から見逃し三振を奪った。望んでいたNPB球団のオファーはなかったが、自費での入団テストを経て台湾球界に挑戦することを決めた。「不安よりも楽しみです」と目を輝かせた櫻井に、暗闇の中にいた昨年の姿はもうなかった。
(町田利衣 / Rie Machida)
