山本由伸の究極メンタル「考えると楽しい」 原点は20年前…祖父との“憩いの時間”

山本由伸「本当に最高の気持ちですし、皆さんの声援が本当に力になりました」
会釈した目は、透き通っていた。試合開始、約2時間前。東京ドームのダグアウトの通路でパッと合った視線は、いつものように輝いていた。ドジャースの山本由伸投手が18日、カブスとの開幕戦「MLB Tokyo Series presented by Guggenheim」に先発登板し、5回3安打1失点で今季初勝利を挙げた。
超満員のスタジアムで浴びる、無数のフラッシュ。数々の大役を任されてきた26歳だが、日本開幕戦は格別のものがあった。「本当に最高の気持ちですし、皆さんの声援が本当に力になりました。東京で開幕するということで、特別な気持ちだった。とにかくこの試合を勝てるように全力で挑みました」。言葉通り勝利に導き、お立ち台でファンに感謝を伝えた。
いつになく吠えまくった。これまで、勝負所の1球で声が漏れることは多々あったが、試合序盤から“絶叫”するマウンドはレアケース。鳴り物応援のない東京ドームに、山本の声が響いた。「とにかく気持ちのこもったピッチングができていたので、最後まで全力を出し切れて良かったと思います」。野球の楽しさを覚えた小学1年生の春。6歳だった山本少年には「楽しいことを全力でやり切る」と決意した出来事がある。
祖父に誘われた「ハゼ釣り」が、憩いの時間だった。6歳では初心者だった釣りも、今では趣味の1つにまで“成長”。きっかけは「すぐにハゼが食い付くから楽しいんです。未経験でも誰でも簡単に釣れるから……。それで楽しさを知ったんです」。楽しみの積み重ねこそ、成功体験の連続。コツコツとレベルアップする大切さを教えてくれたのが祖父だった。
「『次どうしよう?』と考えられるのは、不安と向き合って前に進めているってこと」
釣竿を垂らすだけが好きなのではない。「釣れるポイントをおじいちゃんと一緒に探すこと。(魚が)釣れるのを待つ時間にいろんな話をするのが楽しくて、ですかね」。無邪気な笑顔は、今でも変わらない。
「楽しいから頑張れるんです。『次どうしよう?』と考えられるのは、不安と向き合って前に進めているってこと。(試合を)考えると楽しい。勝つと、もっと楽しい。究極は、みんなが活躍して勝つこと。僕はそのために(調整期間で)考える。試合の日は一生懸命、投げるだけなんです」
20年経っても、目の色が変わらない。高校時代に甲子園出場を果たしたことがなければ、2016年のオリックス入団時はドラフト4位。2022年にオリックスを日本一に導き、メジャー1年目の昨季はチームを世界一に。今季は日本開幕戦でお立ち台に上がった。
努力は、才能を凌駕する――。大観衆の中で、山本は言った。「皆さんお久しぶりです。今日は本当に皆さんの声援の中で投げられて本当に幸せでしたし、すごく力になりました。また良い姿を見せられるように頑張りますので、明日もう1試合また応援していただいて、ロサンゼルスでお待ちしています」。どんどん刻む歴史を、目撃するしかない。
(真柴健 / Ken Mashiba)
