大谷翔平は「少し時間がかかるかも」 開幕好スタートも…専門家が指摘した“懸念”

5回の第3打席で右前打を放ち、5打数2安打2得点の好スタート
ドジャース・大谷翔平投手は18日、東京ドームで行われたカブスとの開幕戦に「1番・指名打者」で出場し、5打数2安打と活躍。それでも“満開”にはまだ遠いようだ。現役時代に通算2038安打を放ち、オリックスのコーチとしてイチロー氏を育てた野球評論家・新井宏昌氏は「大谷は来日後、まだ1球も速球をバットの芯でとらえていない」と指摘する。
初回の第1打席は相手先発の左腕・今永昇太投手に対し、149キロの速球を打って出るも二ゴロ。3回1死走者なしの第2打席では、高めの131キロのスライダーをとらえ痛烈な打球を放ったが、惜しくも野手の正面に飛びセカンドライナーに終わった。
大谷の今季初安打が生まれたのは、0-1とリードされて迎えた5回1死一塁の第3打席だった。カブス2番手の右腕ベン・ブラウンが外角高めに投じた137キロのナックルカーブをジャストミートし、右前打でチャンスを拡大した。これが、この回一挙3得点の逆転劇につながる。6回2死一、二塁での第4打席は、カウント0-2と追い込まれ、低めに決まったブラウンのナックルカーブを振らされて三振に倒れた。
そして、3-1と僅差のリードで迎えた9回の最終第5打席。大谷は先頭打者として、相手4番手の右腕ライアン・ブレイシアの低めのスライダーを巧みにすくい上げ右翼線二塁打。次打者の二ゴロで三塁に進んだ後、3番・テオスカー・ヘルナンデス外野手の左前適時打で、チームにとって貴重な追加点のホームを踏んだのだった。
5打数2安打2得点、今季を打率.400として、まずは順調なスタートを切ったといえる。ただ、新井氏は「2安打と痛烈なセカンドライナーを合わせて、いい当たりの3打席は全て変化球をとらえたものでした。開幕前に巨人、阪神と行ったエキシビジョンマッチ2試合を含めて、大谷は来日後まだ一度も、速い球を真芯でとらえていない。少々気になるところです」と指摘する。
ナ・リーグ2冠の昨年、残る打率も首位打者に4厘差の2位だった
その要因を「今季の大谷は昨季より長いバットを使っています。おそらくその影響で、スイング自体は速く、素晴らしいのですが、速い球に対して振り出しのタイミングがやや遅れています。現状では遅い変化球の方がとらえやすいでしょう。バットは0.5インチ(約1.27センチ)長くしただけでも、最初はヘッドが重く感じるものです。大谷も本格的に慣れるには、少し時間がかかるかもしれません」と分析する。もちろん、長いバットを使いこなせるようになれば遠心力が増し、さらなる本塁打増が期待できる。
一方、新井氏はこの日の大谷の2安打に「もともとパワーは驚異的でしたが、昨年打率.310をマークしたように、ここにきて技術がまた格段に進歩している。昨年の段階で3冠王を獲得していてもおかしくなかったと思いますし、今年はそちらも期待したいです」と強調する。
昨年54本塁打、130打点でナ・リーグ2冠に輝いた大谷だが、打率.310も首位打者のルイス・アラエス内野手に4厘差の2位だったのだ。
「大谷は今季中に投手復帰が見込まれていますから、打者に専念した昨季より疲労度が高くなると思います。球団も超大型契約を結んでいる選手ですから、無理をさせずに休養を取らせながら起用していきたいと考えるはずです。となると打席数が減り、本塁打数が伸びない恐れもある。伸びる余地が大きいのは、打率かもしれません」と見る。ひょっとすると60本塁打よりも、MLBで2012年のミゲル・カブレラ内野手を最後に12年間誕生していない3冠王の方が、今季の大谷には“近道”かもしれない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
